「ルー・ガルー:人狼を探せ!」より

「ルー・ガルー:人狼を探せ!」より© 2023 Netflix, Inc.

2024.11.25

人狼ゲームの恐ろしいルールに着目しつつ、王道コメディーに仕上げた「ルー・ガルー:人狼を探せ!」

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ヨダセア

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「人狼ゲーム」で遊んだことがあるという人は日本でも近年かなり増えてきたように感じる。いわゆる〝正体隠匿(いんとく)ゲーム〟と呼ばれる「人狼ゲーム」は、簡単にまとめると人々の味方である「村人(市民)チーム」と、人々を毎晩ひとりずつ食べてしまう「人狼チーム」に分類されるいくつかの〝役職〟がプレーヤーたちにランダムに配られ戦うゲーム。

「村人チーム」は村人が全滅するまでに誰が「人狼」なのかを当てて全滅させることを勝利条件とし、「人狼チーム」は自分が「人狼」であることを隠したまま村人たちを全滅させることを勝利条件(※)とするのだ。そんな「人狼ゲーム」をコンセプトにした映画「ルー・ガルー: 人狼を探せ!」がNetflixで配信されている。

※ルール上は「人狼と村人が同じ人数になったら人狼の勝ち」だが、それは残った人狼が次のターンで村人を全滅させられることが確定するからであり、本質的には互いに相手の全滅が勝利条件といえる。

「人狼ゲーム」では毎ターンに昼と夜が存在し、昼の話し合い・多数決で最も人狼の疑いが濃いと思われたプレーヤーは〝処刑〟され、村人チームは人狼の犠牲者が減ることを望むが、誤って無実の人間を処刑してしまうと人狼の襲撃はそのまま続いてしまう。

改めて文字に起こすと、なんと恐ろしいコンセプトのゲームだろうか。ゲームのシステムとして行っているため感覚がマヒしがちだが、行っていることはまさに魔女狩り。証拠もなく、〝多数派が選んだ〟という理由で〝処刑〟が行われ、それが誤りだとわかっても「あら残念」程度のリアクションで次の犯人探しに進んでしまうのだ。


主人公一家が中世の街にタイムスリップ

「ルー・ガルー: 人狼を探せ!」はこのゲームの恐ろしいルールに着目したコメディーファンタジー映画。嫌みをチクチク言い合いながら過ごす主人公一家が、なんと「人狼ゲーム」に使うカードの魔法によって中世の街にタイムスリップしてしまうのだ。その街では毎晩誰かが人狼によって命を奪われ、毎日誰かが〝疑い〟だけで処刑されるというリアルな人狼狩りが行われており、一家はそんな街の狂乱に巻き込まれてしまう。

「人狼ゲーム」の面白さは複数存在する〝役職〟にある。日本でよく採用される役職としては、特定のプレーヤーを人狼から守れる「騎士」、1ターンに1人のプレーヤーを占い、その相手が人狼かどうかを知ることができる「占師」などがメジャーだが、そういったさまざまな能力を持つ〝役職〟があること、そして誰もが自分の〝役職〟についてうそをつけることによって、ゲームに駆け引き、読み合いが生まれるのだ。

種類は少し異なるものの、今作では〝役職〟システムも取り入れられ、タイムスリップした家族はそれぞれが何かしらの〝役職〟をもっている。ひとりは透明人間、ひとりは読心術(千里眼)を持っているなど、それぞれの持つ能力が明らかになっていく特殊能力者系の作品としても楽しめる。そして、「人狼ゲーム」においては「人狼」も〝役職〟のひとつ。家族の中にも人狼がいるかもしれないとビクビクする展開ももちろん用意されている。


ジャン・レノが祖父役。時代の流れに感慨深さが

ただ、「人狼ゲーム」らしい疑心暗鬼感や高度な駆け引き・読み合いを期待したなら、その点についてはガッカリしてしまうポイントかもしれない。残酷なゲームシステムに目をつけた作品とはいえ、今作は基本的にコメディー映画だ。

人狼探しどころか、読心術を得たことを家族に対して隠し通そうとする父がいたり、危機的状況にもかかわらず中世の人々を相手に女性人権運動家のような発言を行うアクティブな母がいたり、認知症気味の祖父がいたりと、それぞれが強い個性を持つ一家が時にいがみ合い、時に協力し合いながらタイムスリップを抜け出そうとする様子を描きながら、そのすれ違いの多い会話によって視聴者を笑わせてくれる作品であり、高度なだまし合いを描く作品ではないのだ。

ジャン・レノが認知症気味の祖父を演じているのには、なんとも時の流れを感じる。レノも気づけば76歳。孤高のクールなヒットマンを演じた「レオン」(1994年)の時点ですでに中年ではあったし、日本人としてはその後年齢を重ねたレノがドラえもん姿でテレビコマーシャルに出演しているのも目にしているため、今老人役を演じているのは自然なことなのだが、それでも「ジャン・レノがもうおじいちゃん役か」と感慨深くなってしまった。

絶妙にとぼけた役を演じるジャン・レノの存在感も良質なスパイスとして効いた今作は、映像にすると残酷な「人狼ゲーム」のルール、能力を得て中世にタイムスリップするロマンと興奮、そして人狼にいつ襲われるかわからないスリル、すれ違いで笑いを生む会話といった諸要素とともに、凸凹家族の絆を軽快に描く王道なファミリーコメディーとして楽しめる1作であった。

「ルー・ガルー: 人狼を探せ!」は、Netflixにて独占配信中。

ライター
ヨダセア

ヨダセア

フリーライター。2019年に早稲田大学法学部を卒業。東京都職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(X・Instagram)やYouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」においても映画や海外ドラマに関する情報・考察・レビューを発信している。

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