毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2021.1.21
チャートの裏側:続く延期、気になる流れ
毎週、土曜日か日曜日の昼間には、東京都内のシネコンに立ち寄る。映画を見なくても、いわゆるのぞくだけのときもある。仕事ということもあるが、とにかく足が向いてしまう。それが今は、映画館に行く足がひときわ重い。混んでいても空いていても、どちらも気持ちがざわつく。
新作の公開延期が続く。その1本、1月23日予定だった「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の配給元は、延期の理由を「感染拡大の収束が最優先」とした。本作は、これまでの実績から、大ヒットが見込まれている。緊急事態宣言下では、観客の混み具合を避ける必要はある。
換気の徹底など、感染症対策に対し、映画館は万全を期してきたが、今回はそのレベルを超えている。延期はやむなしと私は考える。気になるのは、延期の流れができてくることだ。全国公開規模の多くの新作が延期となれば、映画館は干上がってしまう。これを恐れる。
すべての配給会社が「感染拡大の収束が最優先」とすれば、映画館は成り立たない。感染の収束と経済面との兼ね合いは、今の日本にのしかかった大きな課題だ。ここでも、それが立ちはだかる。映画と、まっとうに対面できないもどかしさが、日ごとに増してきている。映画は今、人知れず、悲し涙を流しているのではないか。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)