チャートの裏側

チャートの裏側

2022.3.10

チャートの裏側:家族層の試金石に注目

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

「ドラえもん」が帰ってきた。「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」だ。当初は、昨年のこの時期に公開の予定だった。久しぶりの新作登場に、子どもたちの関心はどうなのか。今も続く新型コロナウイルス禍の中、親たちは映画館に行くことをどう感じているのか。

それを探る目安が数字だ。スタート3日間の興行収入が4億4000万円。現時点では、最終25億円以上が見込まれるという。ただ、春休み期間を当て込んで、まだ宣伝費が抑えられている。これから、かなりの額が投入される。その効果を考慮すると、30億円以上も期待できる。

ドラえもん映画の近年の興行推移を見てみよう。15年39億円、16年41億円、17年44億円、18年54億円、19年50億円、20年34億円だ。18、19年と50億円超えが続いたが、コロナ禍の20年(8月に公開延期)に35%ほどダウンした。今回、30億円をクリアすると一昨年並みになる。

映画興行は今、ファミリー層主体の作品動向の注目度が高い。その層の集客がなかなか戻ってこないこともあり、今回の新作は、その一つの試金石でもあった。ただ、まだ回復半ばといったところか。ドラえもん映画が興味深いのは、時代によって興行収入に幅があることだ。今は耐える時だろう。この「映画の風物詩」は強靱(きょうじん)である。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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