データで読解

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2021.1.28

データで読解:公開と配信の相乗効果を

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

映画製作者連盟の発表によると、2020年の年間総興行収入は前年比54.9%の1433億円だった。コロナ禍から映画館が営業自粛を余儀なくされ、多くの作品、特に洋画大作が公開延期される一方、人々の自粛意識の高まりから客足も鈍くなりがちだった。

消費者調査をみると、年間1本以上映画館で映画を見る「映画参加率」も減少。一方で「映画を動画配信サービスで見る人」の数は増加し、全体として「何らかの方法で映画を見る人」の割合は微減にとどまった。映画業界が恐れるべきなのは「動画配信で映画を見るようになること」ではなく「いずれの方法でも映画を見なくなること」だ。

どちらかの盛り上がりは相互の盛り上がりにつながる。多くの人が動画配信で「鬼滅の刃」のアニメシリーズを鑑賞したことが劇場版メガヒットの要因の一つだし、劇場版のヒットでアニメシリーズの注目度は更に高まった。何らかの形で映画ファンが物語の世界観、キャラクターに触れていることが重要だ。

新作を公開する映画館では、安全対策に万全を期して観客を楽しませる。一方で、延期となった期待作は、シリーズの先行作や関連作品を動画配信で楽しみながら、公開を待ってもらう。こうした状況が、映画興行の平常化と、ひいては産業の未来につながると考える。(GEM Partners代表・梅津文)

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