「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

2021.7.08

チャートの裏側:洋画復活 のろしの高さは

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

果たして、洋画復活ののろしになるか。期待の「ゴジラvsコング」が、スタート3日間で興行収入6億2000万円だった。昨年1月以降に公開された洋画では最高の出足だ。そこだけを見れば健闘と言えるが、日本人になじみ深いコングが登場したゴジラ映画としてはどうだろうか。

ハリウッドゴジラは、今回が4作目。興収は、1作目推定53億円、2作目28億円、3作目32億円である。コングは作品の興行力を上げる。だから新作は、2、3作目超えが期待される。現時点では、最終25億~30億円だろうか。無難か、物足りないか。少し判断が分かれる。

最新の映像技術によって、両雄のバトルはすさまじい。これはファンであれば十分に予測できる。失望感はないだろう。ただ、こうも考える。バトルを楽しむ。さまざまに微妙な動きをする両雄のビジュアルに興奮する。ファンはいいが、そこが中心では興行が広がるかどうか。

作品に何かが足りない。先の読めない意表をついた話の展開がほしい。人間の魅力がもっと描き込まれていたら、映画は別の表情を見せたのではないか。迫力感ある凝りに凝ったビジュアルも、見ているうちに、どれも似たような感じがしてくる。このあたりが、今後の興行推移に影響すると考える。のろしは高く上がらないかもしれない。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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