毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2023.1.20
特選掘り出し!:「ノースマン 導かれし復讐者」 荒ぶる王子、荘厳で濃厚に
「ウィッチ」「ライトハウス」で米インディペンデント映画の最も注目すべき監督の一人となったロバート・エガースが放つスペクタクル史劇。前2作とは桁の違う製作費を投じ、威風堂々たるアクション大作を完成させた。
時は9世紀。スカンジナビアの島国の王である父を叔父に殺され、国外に逃れた王子アムレート。バイキングの屈強な戦士に成長した彼は、奴隷に成りすましてアイスランドの農場に忍び込む。
シェークスピアの「ハムレット」の原形とされるアムレートの伝説に基づき、復讐(ふくしゅう)に身を投じた主人公の旅路を映像化。戦闘シーンにおけるバイオレンスの激しさ、北欧の大自然の荒々しさは、近年のこのジャンルで突出した迫力で、時に厳かな美しさも感じさせる。歴史への探究心に満ちたリアリスティックな視点と、予言者や魔法使いを登場させた超自然的なエッセンスが混じり合い、濃厚にして重厚な2時間17分となった。
アレクサンダー・スカルスガルドがアムレートを演じ、ニコール・キッドマン、アニャ・テイラージョイ、ウィレム・デフォーらの豪華俳優陣が共演。鑑賞時は万全の体調でどうぞ。東京・TOHOシネマズ シャンテ、大阪ステーションシティシネマほか。(諭)