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2023.10.17
〝とんでもない〟世界観が生んだ ぶっとび中国製UFOロードムービー「宇宙探索編集部」 コン・ダーシャン監督
北京電影学院の卒業制作「宇宙探索編集部」が、アジア中で注目を集めている。廃刊寸前のUFO雑誌編集長が宇宙人を探して突き進む、風変わりなロードムービーだ。北京、香港をはじめとする国際映画祭で受賞し、映画ファンを魅了。本作で一躍注目されたコン・ダーシャン監督が、企画のきっかけや製作の手法について語った。
UFO雑誌「宇宙探索」の編集長タンは、中国西部の村に宇宙人が現れ、不思議な現象が起きているという情報をつかみ、仲間を連れて西に向かう。一行を待ち受けていたのは、宇宙人の死体を冷凍保存している男や、宇宙からの信号を鍋で受信する青年たち。村人たちは宇宙人やその仕業を大真面目に語る。タンは宇宙人に出会えるのか――。
偽の宇宙人のニュースがきっかけ
コン監督は、卒業制作を考えていた時にあるニュースに遭遇した。宇宙人を捕獲したという村人がいたが、取材したら宇宙人は偽物だったというのだ。これが本作のきっかけになった。「ニュースは偽物と報じたが、本物だったらおもしろいと思った」
タン編集長らが訪ねた村の人たちは、真剣に宇宙人について話す。「インスパイアされたニュースでも、村人たちは、いかにして宇宙人を捕まえたか、真面目に一生懸命に話していた。リアルに語っていたんだ。でも、話している内容は不自然で、とんでもないことばかり。その落差、ギャップにものすごく引き付けられた。そういうズレを表現するのが大好きなんです」
キーワードは「とんでもない」のようだ。「この映画のように『とんでもない』ことに真面目に取り組んでいる人は、誰がどう見てもおかしい。でも日常生活でも、『とんでもなさ』は結構見かけるものだと思う。多くの人には当たり前でも、僕には変だと思うことがある。子供のころ、大人から決まった基準で見なさいと言われると反発したし、大人が真面目な態度でやっていることがおかしく見えたことはいくつもあった」。映画作りだけでなく、ものの見方、発想の源ということか。「『とんでもない』は、僕にとって世界観の一つ。潜在的な意識で、世の中を観察する時の方法であり角度なんだ」
「宇宙探索編集部」©G!FILM STUDIO BEIJING Co.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED
150万人動員「成功したアート映画」
この映画、コメディー、SF、ロードムービーと多彩な色合いを見せながら進んでいく。「脚本を書き終えてから、製作に投資してくれる人にどう説明するか悩んだ」。プロモーションの段階でも、どう位置付けるか議論を重ねたという。「SFと言ったら観客に訴えられそうだし、悲劇的要素もあってコメディーとも言い切れない。日本の配給会社は上手に位置づけしてくれた。『UFOロードムービー』ってね」
小品ながら4月に中国全土で公開され約150万人を動員、人気映画サイトで最高評価を得るなど話題になった。新人監督の卒業制作としては大成功。ただ「僕にとっては商業映画」といい「もっと多くの人が見てくれると予想していた」。と言った後で「成功したアート映画だと証明された」と満面の笑みを見せた。