安魂 ©2021「安魂」製作委員会

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2022.1.20

安魂

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

唐大道(ウェイ・ツー)は地位も名誉も手に入れたが、独善的な作家。自分の考えを息子の英健(チアン・ユー)にも押しつけ、農村出身だからと恋人と別れさせる。その直後に、英健は若くして急死。息子の魂を捜し求める大道は、英健とうり二つの青年を街で見かけ、後を追う。

周大新の小説が原作の日中合作映画。大切な人を亡くした時に、人はどのようにして心を再生させるかを真正面から丹念に描いた。大道は英健と容姿がそっくりの降霊術師の青年の元に足を運ぶが、2人の関係性がじわじわと変化するさまを見せる脚本が秀逸。互いに詐欺と知りつつも、ほんの一瞬でも親子を感じさせる繊細な演出が余韻を残す。喪失の悲しみや後悔にどう向き合うかは、これまでに何度も取り上げられているが、目線の低さとあざとさのない大道やその妻の描写は、かすかなユーモアも含め心に響く。派手さはないが、じっくり味わいたい映画だ。日向寺太郎監督。1時間48分。東京・岩波ホールで公開中、2月4日から大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(鈴)

ここに注目

 大道は家父長制の権化のようなエリート主義者。そんな主人公の悔恨から救済への軌跡を、俳優の表情やたたずまい、流れゆく川の情景などを丹念にカメラに収めながら繊細に描いた。ロケ地「開封」の地名は、「心を開く」「魂を解き放つ」という主題を暗示しているかのようだ。(諭)