チャートの裏側

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2021.10.07

チャートの裏側:風雪に耐え熟成の先に

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

世界的な新型コロナウイルスの感染拡大で、何度も公開延期を余儀なくされた。シリーズ最新作「007ノー・タイム・トゥ・ダイ」だ。スタート3日間では、興行収入が6億1000万円。この時期の洋画としては、見事な出足と言える。現時点では最終30億円以上が見込まれる。

多くのファンが待ち望んでいた印象が強い。6年ぶりの新作に加え、テレビスポットでも流れたダニエル・クレイグ最後のボンド役という事前の情報も大きいとみた。どこか、卒業イベントに参加してお祝いに駆けつけた雰囲気が館内にあった。やけに温かさが感じられた。

今回、満杯近い映画館で、ある確信があった。60年近いこの長期シリーズは、もはや別次元に入りつつあるのではないかと。それは映画文化の神髄につながる。映画が風雪に耐え、熟成の先に生まれた香り、輝きに到達した感じがあった。全盛時の華やかさとは違う感覚である。

時代の波を大きく受けてきたからこそ、その道筋ができ上がったと思う。この期間、政治的、社会的な変化と、映画と観客自体の移り変わりは激烈だった。その長い歳月のなか、「007」はさまざまな試行錯誤を繰り返し、今に至っている。それが感動的でないはずがない。次世代「007」の運命やいかに。さらなる試練が待ち構える。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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