ひとしねま

2022.8.05

チャートの裏側:恐竜の迫力健在、新味は

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

さすがの大ヒットだと言うべきか。「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」である。「ジュラシック」シリーズの6作目にして完結作だ。最初の3日間の興行収入は約13億円だった。前作は最終で81億円。シリーズの興行収入のアベレージは高い。新作はどうなるか。

1作目「ジュラシック・パーク」(1993年)は衝撃的だった。その意味は、恐竜の精緻で大迫力のビジュアルに尽きる。登場人物たちが恐竜を仰ぎ見て驚がくしたように、観客も同様の気持ちを抱いた。最先端を行く映像技術、抜群の企画アイデアをもつ米国娯楽大作は元気だった。

このシリーズの興行推移が興味深い。1作目(推定約135億円)が頂点に立つが、2、3作目と数字を落とした。それが、「パーク」から「ワールド」タイトルになる4作目から上昇した。ちょっとした恐竜ブームもあったのだろう。恐竜映画は古びていないように見えた。

今回の新作は、テーマ的には人間と恐竜との共存の形を、これまで以上に膨らませた。恐竜をめぐるロマンと恐怖、商業性などの定番的な観点を経て、共存に向かう道筋である。恐竜は古びていない。アクション仕立てのバトルも迫力はある。ただ、新鮮さには欠ける。やりつくした感があるからだろう。ここが今後の興行ポイントとみる。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)