ジャンクヘッド  c)2021 MAGNET/YAMIKEN

ジャンクヘッド c)2021 MAGNET/YAMIKEN

2021.3.25

特選掘り出し!:「JUNK HEAD」 地下世界の秘密、手作りで

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

素人作家が7年かけて作り上げた、ストップモーションアニメ。気の遠くなるような製作過程と高い完成度。驚きの一本。

地下世界に暮らす人工生命体の生殖の秘密を探るべく単身派遣された主人公の冒険物語。移動中に狙撃されてバラバラになるものの地下科学者の手で頭部にガラクタの手足を付けた姿で再生する。

見どころの一つは、緻密に作られた地下世界と登場する生きものたちの造形だ。B級SF映画のような怪物や人工生命体は不気味だけれど愛嬌(あいきょう)もあり、凶暴で残酷、時にはちょっと下品な描写があっても、手作り感がユーモアともなる。そしてよく動く。怪物に追いかけ回されたり戦ったりと大暴れし、背景では本筋と関わらない小物がちょこまかと動き回る。監督自身が吹き替えたセリフは人造語で字幕つき。表情のない人形たちはその動きで、生き生きと喜怒哀楽を表現する。

倉庫にセットを組み立て、人形の造形や撮影、CGによる効果など、ほぼ単身、独学で作り上げたという。3部作の第1部。成績次第で続編のスケールも決まるとか。刮目(かつもく)すべし。堀貴秀監督。1時間39分。東京・アップリンク渋谷、大阪・イオンシネマシアタス心斎橋ほか。(勝)

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