パーム・スプリングス  ©2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.

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2021.4.08

特選掘り出し!:「パーム・スプリングス」 同じ毎日を突破、まぶしく

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

登場人物が過去に舞い戻り、何度も同じ時間を生きるループものは、タイムトラベルSFの一形態だ。「恋はデジャ・ブ」などの良作がいくつもあるこのジャンルに、奇想天外でちょっぴり胸に染みる快作が新たに誕生した。

妹の結婚式に出席するため、砂漠のリゾート地を訪れたサラ(クリスティン・ミリオティ)が、とある洞窟に迷い込んだことから、果てしなく同じ一日を繰り返すループにはまってしまう。困惑したサラは、はるか前からループに囚(とら)われている風変わりな青年ナイルズ(アンディ・サムバーグ)と行動を共にするのだが……。

一見おバカなコメディー調だが、ループ現象がもたらす万能感や虚無感、キャラクターの変化と成長をハイテンポで描く本作は、このジャンルのツボを完璧に押さえている。恋に落ちそうでなかなか落ちない男女のもつれを通して、幸せとは何かを問う人生問答も面白い。そして終盤、時間の牢獄(ろうごく)からの脱出を図るヒロインの一念発起に注目。コロナ禍で閉塞(へいそく)した日常を強いられる観客の目に、ハチャメチャな突破力がまぶしく映るだろう。マックス・バーバコウ監督。1時間30分。東京・新宿ピカデリー、大阪・なんばパークスシネマほか。(諭)

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