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2024.11.04
(一部ネタバレあり)今までとは違う⁈「ゾンビ映画」 フィリピン発ゾンビホラー「アウトサイド」
「ゾンビ映画」をよく見てきた。少し前ならミラ・ジョボビッチ主演の「バイオハザード」シリーズ、あるいは韓国の「新感染 ファイナル・エクスプレス」や日本の「アイアムアヒーロー」、もとはテレビドラマだが、竹内涼真主演の「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」も。皆さんの中にも、おおっぴらに言うと気味悪がられるが、実は「クセになる」という隠れ(?)ファンがいるはずだ。
そんな潜在的な〝市場〟に新たに参戦してきたのが、フィリピン発の配信オリジナル作品。Netflixで独占配信中の映画「アウトサイド」は、予想とはちょっと違った展開だったが、この結末はゾンビ映画ならでは――と納得するストーリーだった。見どころは?
「アウトサイド」のあらすじはこうだ。舞台は、理由は不明ながら街じゅうにゾンビがうごめく世界。メガネ姿の優しそうな雰囲気の主人公、フランシス(シド・ルセロ)は実家の農場を訪れるが、父親は亡くなり、母親はゾンビ化しており殺さざるを得なかった。フランシスは実家の一軒家に、しばらく身を潜めようと家族に告げる。
フランシスと妻アイリス(ビューティー・ゴンザレス)、長男ジョシュ(マルコ・マサ)、次男ルーカス(エイデン・タイラー・パッドゥ)は、荒廃した外の世界におびえながら日々を過ごす。一家の食事を預かるアイリスは、このままでは飢え死にしてしまうと、自ら食糧を探しに外に出たいと宣言する。しかしフランシスは、家の中を出たい本当の理由は別にあるはずだといい、一家は混乱する。そんな彼らに、ゾンビたちは容赦なく襲いかかり……。
「ハラハラドキドキ」ではなく
さて展開は。ホラー色全開、ハラハラドキドキのノンストップアクションムービー――というわけではなく、約2時間20分の中で、ゾンビが登場するシーンは案外少なめ。例えば前述の「新感染 ファイナル・エクスプレス」は、はや物語の前半時点でゾンビが増殖し出し、画面に映し出される比重が「ゾンビ<(ウイルス感染していない)人間」から「ゾンビ>人間」に変わっていくという恐怖の世界だった。だが、今作で描かれる「恐怖」はちょっと違う。画面構成は「ゾンビ<人間」(時折はゾンビの大群が登場)のままだが、フランシスが異常な世界に身を置く中で、過去の秘密も明らかになりつつ、変貌を遂げていく。正気が狂気にじわじわと変わっていくプロセスが、今作の最大の「恐怖」。アクション的なホラー以上に、人間ドラマの要素が色濃い。
「先輩」の演技はすごい⁈
せっかくなので、4人家族だけでなく、ゾンビにも焦点を当てる。今作は「フィリピン初のゾンビ映画」だそうだが、登場するゾンビの外見や動きは本格的だ。ただ、「新感染 ファイナル・エクスプレス」やその続編「新感染半島 ファイナル・ステージ」に出てきたゾンビの演技を思い出すと、ゾンビの「先輩」たちの怖さ、迫力はすごいな、とも思った。今作はホラーが最大の主眼ではないのかもしれないが、今後はぜひ、過去の先輩から、吸収できる部分は取り入れてほしい。
ちなみに、いろいろなゾンビ映画を見てきた筆者が気付いた点がある。「アウトサイド」のゾンビは、少しだけ人間の言葉をしゃべる。他の作品だと、体中にウイルスが回ってからだと「アー」「ウー」などしか言えなくなるが、何と話しているのかは作中で確かめてみてほしい。
ついでに言えば、「新感染」シリーズに出てくるゾンビは、とにかく足が速い。男女とも主人公たちを追いかける脚力がすさまじく、「新感染」の世界では感染すると体が一気に強靱(きょうじん)になるのかと、私はひそかな仮説を立てている。ゾンビもいろいろ、である。
「ゾンビ映画ならでは」の結末
さて、冒頭に書いた「ゾンビ映画ならでは」の点だ。物語の終盤の出来事でもあるので詳しくは触れないが、作中で出番の多い、ある人物にウイルス感染の危機が迫る。そして、それを見たほかの人物がとった意外な行動は――。確かに、例えば銃の撃ち合いで登場人物がピンチに陥るといった設定では、このストーリー展開にはできないという人間ドラマが最後に待っている。
今作に限らないが、ゾンビの大群は極限の世界を描く「装置」として、いい素材なのだろうと思う。果てしなく追い詰められると、人間は本性が現れる(私はゾンビに襲われたり、宇宙船の襲来を受けたりしたことがないので、確信はないけれど)。
思えば「新感染」シリーズで描かれたのも、極限の状況に追い込まれた主人公たちの家族愛だった。さて「アウトサイド」や、未来のフィリピンから放たれるゾンビ映画が描く世界は……。オンラインの動画配信サービスの普及で、海外作品にも格段に触れやすい環境になった今、楽しみは尽きない。
Netflix映画「アウトサイド」は独占配信中