ひとしねま

2022.7.22

チャートの裏側:古代の戦い、問いかけ重く

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

初登場トップ「キングダム2 遥かなる大地へ」が大ヒットだ。前作は、最終の興行収入が57億3000万円。圧倒的な支持を受けての2作目である。スタート4日間では、前作の169%(興行収入比較)。最終60億、70億円もありえる。3連休さなかの公開とはいえ、驚きである。

紀元前の中国が舞台だ。対立する国同士の戦いを軸に、野望をもつ若者がその中枢で活躍する。コミック原作の邦画実写アクション大作は、興行の成功、不成功が分かれる。コミックの世界観が実現できているか。俳優は、その世界観のなか、違和感なく活躍できているか。

そのあたりが非常に重要で、そこがうまくいかないと、原作ファンは見限る。客層も広がらない。「キングダム」2作は中国が舞台だが、日本人俳優が演じて、なかなかリアル感がある。アクション描写の技術力も高い。話の展開も波瀾(はらん)万丈だ。成功の要素が詰まっている。

新作では、こんなことも考えさせられた。中国(中華)の統一が話の中心だから、戦が不可欠な視点から描かれる。戦争が前提だ。ラスト、「戦はなくならない」という言葉が、指揮をとるある将軍の口から出る。これは、未来永劫(えいごう)の言葉として受けとるべきなのか。映画の時代から2000年以上たった今も、とてつもなく重い問いかけである。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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