ひとしねま

2022.11.25

データで読解:新たに紡いだ物語の力

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

新海誠監督の「すずめの戸締まり」は2週連続1位を獲得した。累計の興行収入は41億円を超え、最終興収140億6000万円を記録した2019年7月公開の前作「天気の子」と同程度で推移している。市場調査に基づく意欲度も公開2週目時点でほぼ同程度。意欲者層も10代男女が高く、幅広い年代に分布している。

一方「最も見たい」とする「ファーストチョイス」の値は「すずめ」が上回っている。「天気の子」は競争が激しい夏休み興行の影響があると考えられるが、「すずめ」は鑑賞に至る確度が高めの意欲度である。現時点の数値からは100億円超えほぼ確実、「天気の子」と同等か上回る興収となりそうである。180億円を超えた「ONEPIECEFILMRED」など邦画アニメが豊作の22年、また大きなヒット作が加わった。

「すずめ」は、オリジナル作品の100億円級ヒットという側面も持つ。多くのヒットアニメ映画は大人気の漫画やテレビの劇場版が多く、すでに愛着を持っている物語を劇場でも楽しむものだが、「すずめ」は、監督が新たに紡いだ物語である。映画作家・新海誠のブランド力の強さとともに、映画という媒体の持つ力も示しているといえるだろう。(GEMPartners代表・梅津文)

すずめの戸締まり

九州の海辺の町に住む17歳の鈴芽(声・原菜乃華)は、災いが噴き出る「扉」にカギをかける〝閉じ師〟の草太(声・松村北斗)と出会い、日本中の廃虚にある扉を閉める旅に出る。

©2022「すずめの戸締まり」製作委員会