毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2022.10.14
「もっと超越した所へ。」
デザイナーの真知子(前田敦子)と動画配信者の怜人(菊池風磨)。ギャルの美和(伊藤万理華)とフリーターの泰造(オカモトレイジ)。シングルマザーで風俗嬢の七瀬(黒川芽以)と売れない俳優の慎太郎(三浦貴大)。子役だったタレントの鈴(趣里)とお坊ちゃんの富(千葉雄大)。そこそこ幸せな4組の男女に別れの危機が訪れ、過去と本音が明らかになる。
劇作家、根本宗子が自らの舞台を基に脚本を書き、山岸聖太監督が映像化。それぞれの日常をシームレスにつなぎ、テンポのいい会話劇で見せる。女性目線で描かれる4組の共通点は、男性陣がクズであること。個人的には共感度の低い関係性だが、当事者が幸せを感じた瞬間が確かにあり、不満を抱えながらも何かを〝超越〟したいなら他者がとやかく言うのはナンセンス、という恋愛の本質が描かれているかもしれない。本音がさく裂するクライマックスに、映画と演劇の境界線を〝超越〟する祝祭的な仕掛けも。1時間59分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(細)
異論あり
舞台の映画化っぽさを堂々とプラスに転換した演劇的な作りが満載。セットの裏側まで見せる徹底ぶりには潔ささえ感じるが、ラストシーンは蛇足だった。ダメ男としょうもない女の会話劇は〝あるある〟も含めテンポがいいが、最終盤で爽快感が消失してしまったのが残念。(鈴)