「ストーブリーグ」より

「ストーブリーグ」より©SBS

2025.1.29

日本でのリメーク決定! シーズンオフの野球チーム舞台のスポーツ&ビジネスドラマ「ストーブリーグ」

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

筆者:

梅山富美子

梅山富美子

プロ野球を題材にした韓国ドラマ「ストーブリーグ」(2019年)が、日本でリメークされることが昨年(24年)に発表された。韓国では初回視聴率5.5%から最終回19.1%と右肩上がりで、「愛の不時着」を抑えて「第56回百想芸術大賞」でテレビ部門ドラマ作品賞を受賞した話題作。数ある韓国ドラマのなかで、日本でリメークされることになったのも納得の本作の魅力を紹介する。


赤字続きで4年連続最下位のプロ野球チームに招へいされた優勝請負人

プロ野球チーム「ドリームズ」は、4年連続リーグ最下位で、シーズン前にもかかわらず選手や球団も諦めムード。球団経営は赤字続きで、戦力になる選手を集めるための資金もなく、球団の親会社は廃部を画策していた。そんな崖っぷちなチームに、さまざまなスポーツチームを優勝させてきた優勝請負人のペク・スンス(ナムグン・ミン)が立ち上がる。

スンスは、ストーブリーグ(=野球のオフシーズン)に、ドリームズのゼネラルマネジャー(GM)に就任。しかし、野球未経験ということで、選手や球団運営陣からは素人だと相手にされず。さらに、GMとなっていきなり「4番打者をトレードする」と言い出すなど、大胆で強引に見える改革はチーム内外部からの批判が殺到。それでも、チームのあしき原因を明らかにし排除して、着実に強化していく驚くべき彼の手腕に、選手や監督、球団スタッフのイ・セヨン(パク・ウンビン)らは、スンスを認めざるを得なくなる。

プロ野球のオフシーズンを舞台にしているため、普通の野球ドラマなら一番盛り上がる試合のシーンがほとんどない本作。その代わり、いや、それ以上に、球団の裏側で懸命に奔走する人々の人間ドラマが激アツ。型破りな主人公が立ちはだかる球団内外の敵に打ち勝ち、どん底のチームを立て直していく展開は爽快感満載で、ベテラン選手から若手選手まで、野球に人生をかける人々の人間ドラマも胸に込み上げる。

ビジネスドラマの要素も強く、シーズンオフに行われる契約交渉、スカウト活動、選手間のトレード、冬季キャンプ、海外選手の視察、データ分析など、知られざるプロ野球の世界を垣間見たような感覚に。また、プロスポーツの暗部、薬物問題やドラフト会議での不正、賄賂疑惑、球団売却などの描写もリアルで印象的で、これらを決して見て見ぬふりをしないスンスが何よりもかっこいいのだ。

さらに、兵役逃れや障害者雇用といった社会的なテーマにも切り込んでおり、ただのドラマで終わらせないという製作陣のドラマ作りの本気を感じた。


相性ぴったりのナムグン・ミンとパク・ウンビン

本作はスポーツドラマだが、スンスが感情を表に出す熱血漢な主人公ではないのも特色の一つ。うちに秘めた優勝への情熱は見せず、次から次に訪れる「これはもうさすがに球団も終わりだろう」という危機的状況でも涼しい顔をして乗り越えてしまうのだ。彼を潰そうと周囲が躍起になっても、「次はどんな方法で打ち勝つのだろう」「どんなやり方で優勝チームを作るのだろう」と期待せずにはいられず、みるみるうちに常に冷静な彼の魅力に引き込まれていく。

スンス役のナムグン・ミンは冷静沈着なキャラクターがハマり役で、対照的に情熱的なセヨン役のパク・ウンビンとの相性がぴったりだったし、2人が共に目標に突き進むという関係性が築かれていき、思わずグッとくる瞬間が幾度もあった。一方で、敵役はとことん憎く、ゾンビ並みのしぶとさで視聴者をいら立たせたスカウトチーム長役のイ・ジュニョク(「還魂」)、決して友好的でない空気を醸し出し、一癖も二癖もある球団オーナーのおいを演じたオ・ジョンセ(「サイコだけど大丈夫」)の演技は作品を盛り上げ、確かな爪痕を残していた。

また、選手役で「Eye Love You」「偶然かな。」のチェ・ジョンヒョプ、運営チームの若手社員のハン・ジェヒ役で「SKYキャッスル 上流階級の妻たち」「悪霊狩猟団:カウンターズ」のチョ・ビョンギュと注目の若手俳優も出演。「Eye Love You」でチェ・ジョンヒョプを知った人にとって、「ストーブリーグ」での少し素朴さが残るさわやかな演技は、新鮮な印象を与えるかもしれない。

韓国でヒットした本作。NTTドコモ・スタジオ&ライブと韓国のStudio Sによるリメーク版製作が決定している。個人的には「半沢直樹」のような逆境からの大逆転劇、映画「マネーボール」や「ROOKIES(ルーキーズ)」的な崖っぷちから最強のチームをつくり上げる胸熱な展開かつ、これまでに見たことのない野球ドラマとなることを期待して続報を待ちたい。

「ストーブリーグ」はU-NEXTほかで配信中。

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