おとなの事情 スマホをのぞいたら (C)2020 Sony Pictures Entertainment(Japan)Inc.All rights reserved.

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2021.1.07

おとなの事情 スマホをのぞいたら

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

イタリアの大ヒットコメディー映画「おとなの事情」の日本版リメーク。3組の夫婦と1人の独身男性が集まったパーティーで、「スマホに届くメールや電話を全員に公開する」というゲームが始まる。次々と通知音や着信音が鳴り始め、夫や妻、友人の秘密が暴露されていく。

一人一人のキャラクターを際立たせた岡田恵和の脚本が笑いを誘う。うそや告白が上積みされて事態は収拾がつかなくなりそうになる。嫉妬や不倫などそれぞれの事情はありがちで、ユーモアもスパイスされているが、絶え間なく順を追って続くと取って付けたようにも見えてしまった。7人の関係の理由が明かされ、何もなかったかのように一気に収束に向かう展開にも少々首をかしげる。それを救ったのは、益岡徹、田口浩正、木南晴夏、鈴木保奈美ら俳優陣の豊かでほどよく切れのいい表情だ。ピリッと気の利いた落ちで締めたら、ニヤッとできる会話劇になれたのでは。惜しい。光野道夫監督。1時間41分。東京・TOHOシネマズ日本橋、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(鈴)

ここに注目

たくさんの国でリメークされているのは、スマホがもう一つの人格となった現代ならではの物語だから。大枠は同じでも、アレンジの仕方にちょっとずつお国柄がにじみ出るのが興味深い。日本版は、人間関係の粘度が高いようだ。元がしっかりしているので、ハズレなし。(勝)