MAPPA STAGE 2023「アリスとテレスのまぼろし工場」ステージ 左から上田麗奈、榎木淳弥、久野美咲

MAPPA STAGE 2023「アリスとテレスのまぼろし工場」ステージ 左から上田麗奈、榎木淳弥、久野美咲

2023.5.29

MAPPAの勢いは止まらない!「MAPPA STAGE 2023」で解禁された新作3作品からアニメ制作現場にいたライターが感じたこと

誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。

きどみ

きどみ

アニメーション業界を去って2年たつが、いまだに新作アニメ制作が発表されると「制作会社」に注目してしまう。
 
2年前、自分はアニメーション制作会社で制作進行職として働いていた。アニメーターにアニメ制作を依頼したり、スケジュールを管理したり……「画(え)を描く」以外はなんでも担当した。
 
そのため業界を離れても、アニメを見るたびに「誰が作っているのか」を常に注目している。全く違う作風でも、同じ制作会社だとどこかに共通点を感じて、「らしいな」と思うこともあるのだ。
 
数ある制作会社の中で、最近勢いを感じるのが、アニメーション制作スタジオMAPPA。2023年5月21日(日)に、東京ガーデンシアターにて「MAPPA STAGE 2023」が開催され、「地獄楽」「ヴィンランド・サガ」など現在放送中の話題作から、7月に第2期放送が控えている「呪術廻戦」などの人気作まで、MAPPAの代表作が勢ぞろいした。
 
驚いたのは、本イベントで情報が解禁となったMAPPAの新作情報だ。「ぶっちぎり?!」「つるばみ色のなぎ子たち」「アリスとテレスのまぼろし工場」と、一癖ありそうな作品のラインアップにおののく。本記事では、今話題の3作品について一挙に紹介していく。

オリジナルテレビアニメ「ぶっちぎり?!」


©「ぶっちぎり⁈」製作委員会

1作品目は、2024年1月から放送開始予定のオリジナルテレビアニメ「ぶっちぎり?!」。本作は、主人公・灯荒仁(ともしびあらじん)が、かつての親友・浅観音真宝(あさみねまたから)との再会をきっかけに、強者たちの戦いに巻き込まれていく物語。巨大な魔人の影が現れて……?と、先が読めない展開である。
 
「Free!」「BANANA FISH」で監督を務めた内海紘子が監督を、「ハイキュー!!」でシリーズ構成を務めた岸本卓がシリーズ構成と脚本を、そして「遊☆戯☆王」シリーズでキャラクターデザインや作画監督を務めた加々美高浩がキャラクターデザインと総作画監督を担当。豪華メンバーが集結したプロジェクトになっている。
 
「MAPPA STAGE 2023」では、ティザーPVとティザービジュアルが初公開された。どこか懐かしさを感じるキャラクターたちの姿に、親しみを覚える。イベント内では内海紘子監督のコメントも読み上げられた。監督からの「これからぶっちぎってまいりますのでどうぞお見知りおきください」というメッセージに、会場の期待度が高まった。


片渕監督新作「つるばみ色のなぎ子たち」

2作目は、片渕須直監督の新作「つるばみ色のなぎ子たち」。「MAPPA STAGE 2023」では、タイトルの発表のほか、ティザービジュアルとメーキング映像が初公開された。

 
舞台は平安時代。平安時代といえば、煌(きら)びやかな十二単に身を包み、和歌を詠んだり、蹴鞠(けまり)をしたりと優雅な貴族たちの姿を思い出す。しかし本作で描こうとしているのは、のどかな貴族たちの暮らしではないと片渕監督は言う。
 
つるばみ色(どんぐりのかさで染めた色。黒に近い灰色)の十二単をまとった女性の後ろ姿、そして「喪に服す」という意味の「Mourning」という英語タイトルが描かれているキービジュアルから、作品のヒントが得られそうだ。
 
衝撃を受けたのは、制作を手掛けたコントレールのメーキング映像である。
 
本物の十二単を実際に着たり、たいまつを持って歩いたり、ボウフラ(蚊の幼虫)を養殖したり……。アニメーターが画を描いている映像ではなく、作画に起こす前の様子をカメラは映していた。



制作会社に勤めていた際、画の参考としてロケハンに行ったり、写真や動画を見たりすることはあっても、実際にその様子を忠実に再現して画に起こしているアニメーターはいなかったので、ここまでこだわるのかと驚いた。
 
平安時代を生きた人々の周りには何があって、どのように暮らしていたのか。追体験することで、より精度の高い画作りをしようと試みている様子が伝わってくる。完成までもう数年かかると片渕監督が言っていたが、たった数分の映像を見ただけでもその意味が理解できた。完成した作品を見るのが、今から楽しみである。

MAPPA初オリジナル劇場アニメーション作品
「アリスとテレスのまぼろし工場」

3作品目は、2023年9月15日に公開予定のMAPPA初オリジナル劇場アニメーション作品「アリスとテレスのまぼろし工場」。本作は、ある日起きた製鉄所の爆発がきっかけで、月日が止まってしまった町が舞台。「変化は悪」とされる中で、鬱屈した毎日を過ごす14歳の菊入正宗、謎めいた正宗の同級生・佐上睦実、野生の狼のような謎の少女・五実たちの交流が描かれる。


 
「MAPPA STAGE 2023」では、特報映像とティザービジュアル、そしてキャスト陣を初公開。正宗役の榎木淳弥(「呪術廻戦」主人公・虎杖悠仁役)、睦実役の上田麗奈(「ばくおん!!」主人公・佐倉羽音役)、五実役の久野美咲(「ひそねとまそたん」主人公・甘粕ひそね役)がステージに登壇し、作品への思いを語ったり、岡田麿里監督からの質問に答えたりした。

榎木淳弥

上田麗奈

久野美咲
 
榎木は「ネタバレしないように気をつけないと」と言葉を選びながら、本作について「3人の成長が感じられる、人間ドラマです」と話す。岡田麿里監督は、メッセージの中で「甘酸っぱい青春とは全力で逆走している、ヒリヒリした青春」だと表現していた。
 
全貌が謎に包まれている本作だが、公開されたばかりの映像が醸し出す異様な雰囲気に、ゾクゾク。岡田麿里監督は、どんな人間模様を描いたのか。9月まで待ちきれない。
 
以上が、「MAPPA STAGE 2023」で情報が解禁された3作品。見る者を新しい世界へ連れて行ってくれそうな、期待が高まる作品ばかりである。次々にヒット作を生み出し続けているMAPPAの勢いは、まだまだ止まらなさそうだ。

写真提供=MAPPA STAGE 2023

ライター
きどみ

きどみ

きどみ 1998年、横浜生まれ。文学部英文学科を卒業後、アニメーション制作会社で制作進行職として働く。現在は女性向けのライフスタイル系Webメディアで編集者として働きつつ、個人でライターとしても活動。映画やアニメのコラムを中心に執筆している。「わくわくする」文章を目指し、日々奮闘中。好きな映画作品は「ニュー・シネマ・パラダイス」。