「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」©2023 PARAMOUNT PICTURES.

「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」©2023 PARAMOUNT PICTURES.

2023.8.04

気分は爽快 胸は熱く 一発回答「デッドレコニング」

さあ、夏休み。気になる新作、見逃した話題作、はたまた注目のシリーズを、まとめて鑑賞する絶好機。上半期振り返りをかねつつ、ひとシネマライター陣が、酷暑を吹き飛ばす絶対お薦めの3本を選びました。

SYO

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「12万年ぶりの最高気温」「地球沸騰化」と言われる今年の夏。そのぶんヒートアイランドに生きる我々においてはリスクを負うわけで(体調はもちろん、電気料金の高騰による家計の圧迫も深刻だ)、外出するにしても例年以上に〝意義〟や〝見返り〟を求めてしまうモードに入っているのではないか。ただ一方で、コロナ禍で我慢し続けた3年間を経て、「外に出て思いっきり〝リアル〟な楽しみを追求したい!」という欲求も高まっていることだろう。そうしたアンビバレントな状況で、映画に何ができるのか……。その一発回答といえるのが「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」だ。
 

 

アクションから社会問題まで エンタメの極致

本作は、言わずと知れた「ミッション:インポッシブル」シリーズの最新作にして第7作。腕利きのエージェント、イーサン・ハント(トム・クルーズ)が各地を飛び回り世界の危機を救う不可能ミッションに臨む人気シリーズだ。7月21日に日本公開されると、初週3日間で興行収入10億6484万2820円、動員69万1885人の大ヒットを記録。2023年公開の実写映画No.1となるロケットスタートを記録した。
 
トム・クルーズの超人的なノースタントアクションは今回も健在。バイクに乗ったまま崖からパラシュート降下、走行中の列車の屋根で格闘等々、度肝を抜くシーンが連続する。なぜこんなにも危険なスタントに臨むのか? 「『ミッション』シリーズだからだ」「とにかく観客を喜ばせたい」とは彼の言葉だが、「感じたことのないスリルを味わえる」作品であり「アクション・サスペンス・人間ドラマ、涙(シリアス)と笑い(ライト)、そして魅力的なキャラクターとAI(人工知能)という現代的なテーマまで、すべてを備えたエンタメの極致」である「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」は、この酷暑という〝逆境〟においてむしろその存在価値を高めた印象を受ける。


「ミッション:インポッシブル デッドレコニングPART ONE」©2023 PARAMOUNT PICTURES. 

アスリート的トムの躍動に感動

本作はある種のスポーツ的な要素も持っており、物語とは別のレイヤーで「トム・クルーズという一個人が生身の肉体を駆使して頑張る姿に感動する」という効果も。つまり我々は物語の受動的な目撃者でありながら、能動的に応援もしているのだ。面白く、楽しめて、心が熱くなる――。無理して外に出る以上、「行ってよかった」と思える満足感=コスパを求めるのは当然のことで、その観点で「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」にかなうリッチな体験ができる作品は今夏見当たらない。
 
余談だが、U-NEXT等では「ミッション」シリーズの過去作を一挙配信中。最新作観賞の前後で予習/復習を行えば、より楽しみが持続するはずだ。その流れでここからは、自宅で見られる「この夏にオススメ」な作品を2本紹介しよう。1本は今年劇場公開され、直近でソフト/配信リリースされた新作、もう1本は配信オリジナル作品だ。


「フェイブルマンズ」

巨匠の自伝「フェイブルマンズ」

2023年日本公開作で、既に配信やブルーレイ/DVD等で視聴可能なオススメ作品だと「TAR/ター」「ザ・ホエール」「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」「イニシェリン島の精霊」「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」などがあるが、ここは「ジュラシック・パーク」ほか数々の〝夏休み映画〟の名作を送り出し、我々を魅了し続けたスティーブン・スピルバーグ監督の自伝的作品「フェイブルマンズ」を推薦したい。
 
本作は、映画に魅せられた少年が自主映画製作に没頭し、成長していく青春物語。カメラを手に創意工夫を繰り返し、「リアルな銃撃戦の見せ方」から「ドラマチックな心情演出」まで会得していく主人公の姿を軽快に描いていく展開は、スピルバーグ監督の特色でもある温かく懐かしい多幸感にあふれている。「E.T.」「プライベート・ライアン」といったこれまでのスピルバーグ作品を振り返り「あの作品のルーツはこれかもしれない」と思いを巡らせる楽しみも提供してくれる。だが、「フェイブルマンズ」はそれだけに終わらない。
 
主人公は映画に出合ってしまったことで、表現者としての〝業〟も背負っていく。家族の危機に「この様子を撮りたい」という欲望を感じてしまったり、自分の采配次第で画面に映る被写体のパブリックイメージを操作でき、人生を変えられることに気づいてしまったり……。華やかなキャリアの裏で、スピルバーグ監督が感じていたであろう苦悩が切々と、時に赤裸々に告白されていくのだ。この陰と陽を兼ね備えた構成が、観賞後にしっかりと〝残る〟見ごたえと余韻を生み出している。

「フェイブルマンズ」©2022 Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
4K Ultra HD+ブルーレイ(7260 円)、ブルーレイ+DVD(5280円)が発売中
 

「ハイジャック」は配信で 連続ドラマで途切れぬ緊迫感

そして配信オリジナル作品。せっかくなのでここでも新作を紹介しよう。Apple TV+で6月28日より配信中のドラマ「ハイジャック」だ。本作は1話45分前後のシリーズもの(全7話)で、謎のグループにハイジャックされたドバイ発ロンドン行きの飛行機の内外での攻防を、リアルタイムに描いていくサスペンス。乗客がパニックに陥るなか、ある特殊技能を持つ主人公サム(イドリス・エルバ)は状況を打破しようと奔走する。


「ハイジャック」画像提供 Apple TV+

乗客VSハイジャック犯の手に汗握る心理戦、上空と地上で物語が同時進行し、状況が二転三転するスピーディーな展開、飛行機がどの国の領空にいるかで各国の対応が変わり緊迫度が推移するリアルな設定、犯人グループの素性と目的が少しずつ明かされていく謎解き要素、毎話続きが気になってしょうがなくなる衝撃的なラストの〝引き〟……。緊迫感が命のハイジャックものを連続ドラマでやって場が持つのか?という懸念が、ものの見事に杞憂(きゆう)に終わるハイクオリティーな一作だ。
 
夏休みは、年始あるいは年度初めから続いた仕事等々に一旦リセットをかけられるタイミングでもある。日常のごたごたからつかの間離れて映画というエンタメに心を浸し、豊かな時間のなかで涼んでいただきたい。

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ライター
SYO

SYO

1987年福井県生まれ。東京学芸大学にて映像・演劇表現を学んだのち、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て2020年に独立。 映画・アニメ、ドラマを中心に、小説や漫画、音楽などエンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。トークイベント、映画情報番組への出演も行う。

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