ベルイマン島にて  © 2020 CG Cinéma ‒ Neue Bioskop Film ‒ Scope Pictures ‒ Plattform Produktion ‒ Arte France Cinéma

ベルイマン島にて © 2020 CG Cinéma ‒ Neue Bioskop Film ‒ Scope Pictures ‒ Plattform Produktion ‒ Arte France Cinéma

2022.4.22

ベルイマン島にて

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

スウェーデンが生んだ巨匠、イングマール・ベルイマン監督が愛したフォーレ島。映画作家として認められて間もないクリス(ヴィッキー・クリープス)と、既に名のある監督のトニー(ティム・ロス)が、この島にやって来る。

停滞感を抱いている2人が、夫婦のすれ違いを描いた「ある結婚の風景」の撮影が行われた家でひと夏を過ごすのだから、全編にかすかに不穏な気配が漂う。けれども海辺でありながらどこか乾いた島の美しい風景や名所めぐりに出かける場面のおかげで、重いタッチに傾くことはない。

クリスが執筆中の脚本をミア・ワシコウスカ主演の劇中劇として織り込み、虚と実を行き来する入れ子の面白さもある。カップルのモデルは、ミア・ハンセン・ラブ監督自身とかつての年の離れたパートナー、オリビエ・アサイヤスだろう。監督は自身の経験と巨匠の作品を通して、男女の役割や依存について問いを投げかけつつ、ひとりの大人の女性の心の自立を鮮やかに描いた。1時間53分。東京・シネスイッチ銀座、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(細)

異論あり

映画監督のカップルがベルイマンゆかりの島を訪れ、愛と創作について探求する。その着想に好奇心をそそられるし、風景も撮影も抜群に美しいが、これといった出来事は起こらず退屈な時間帯も。しかし油断は禁物。3層のメタ構造、異なる解釈が可能な結末に魅了された。(諭)

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