「ザ・メニュー」©2022 20th Century Studios. All rights reserved.

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2022.11.18

「ザ・メニュー」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

カリスマシェフのスロービク(レイフ・ファインズ)が極上の創作料理で客をもてなす孤島のレストランに、料理評論家や映画俳優らの選び抜かれたセレブがやってくる。物々しい雰囲気の中、コース料理がふるまわれるが、この日のメニューには恐ろしいサプライズが用意されていた。

外界と隔絶した太平洋沖のレストランというたった一つの状況設定のもとで、全編が進行していくサスペンス映画。ガラス越しに荒々しい海を間近に望むレストランの内装から、軍隊のように統率された厨房(ちゅうぼう)スタッフの動き、現代アートのごとき料理の数々まで、緻密に構築された様式美に目を奪われる。グルメにまつわるブラックな風刺を盛りつけた映像世界は、謎めいたスロービクの人物像も好奇心をかき立てる。唯一の招かれざる客の若い女性マーゴ(アニャ・テイラージョイ)と、スロービクとの対立劇もスリルを高め、刺激的な映画体験に浸れる一作だ。マーク・マイロッド監督。1時間47分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)

ここに注目

ワケありの登場人物たちのキャラクターは典型的で意外性はないが、ゴージャスで不穏な空気に一気に引き込まれた。あくどさを感じる過剰な描写と美しく整えられたセットデザインのバランスが絶妙。「イカゲーム」などのデスゲーム系の作品が好きな人は間違いなく楽しめそう。(細)