「エクソシスト 信じる者」© Universal Studios. All Rights Reserved.

「エクソシスト 信じる者」© Universal Studios. All Rights Reserved.

2023.12.07

悪魔を祓う〝宗教的治療〟 「エクソシスト 信じる者」のオカルトとリアル

誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。

芦田央

芦田央

「悪魔祓(ばら)い」を題材とした「エクソシスト」(1973年)の公開から50年という節目になる今年、シリーズ最新作の映画「エクソシスト 信じる者」が全国の劇場で公開されている。シリーズとしては1作目以降に4本の映画が製作されているが、本作は「第1作『エクソシスト』の正統続編であり、新章」という位置づけだ。

 
 

1作目「エクソシスト」は全米興収1位

1作目の「エクソシスト」は同名小説を原作とし、世界的にオカルトブームを巻き起こした記念碑的な作品である。本国アメリカではその年の最高興行収入を記録し、第46回アカデミー賞ではホラー映画として初となる作品賞を含んだ10部門にノミネートされ、原作者ウィリアム・ピーター・ブラッティ自身による脚色賞と、音響賞の2部門で受賞。
 
「エクソシスト」のあらすじはこうだ。女優クリスの娘リーガンは、何かにつかれたかのように見た目も人格も変貌し、あらゆる近代医療でも治すことができない。クリスは娘のために奔走し、最終的に悪魔祓い師(エクソシスト)に依頼する。


最新作も受け継ぐ世界観

悪魔につかれた度合いを表すかのように、徐々に生傷が増えていく特殊メークや、見た目は少女なのにしわがれた男性の声で話すという音などのオカルト的表現と、少女の部屋だけ極寒で息が白くなるなどのリアルさで、世界中の観客が「エクソシスト」に恐怖した。そういったすさまじい表現の裏で、「悪魔祓い」が現実世界に根差した合理的な行為として描かれているのが特徴だ。
 
「悪魔祓い」の儀式を執り行った1人であるカラス神父は、神職者と精神科医という二つの顔を持つ。つまり「エクソシスト」で行われる「悪魔祓い」は、医療にも宗教にも精通した人間による「宗教的治療」なのである。この世界観は、最新作「エクソシスト 信じる者」にも受け継がれている。


50年後 再び悪魔が 今度は2人

本作の舞台は「エクソシスト」から50年後の現代。妻を亡くしたビクターは、男手一つで娘のアンジェラを育てている。ある日アンジェラが、友人と共に失踪。捜索の末になんとか無事に保護されたが、その後2人共が別人のようになり、聖書を破いて食べたり教会で神父を罵倒したりするなど常軌を逸した行動をとり始める。ビクターは、隣に住む看護師を通じて、過去に自分と同じような目に遭い、娘を守り抜いた経験を持つクリス(第1作から続投のエレン・バースティン)の存在を知るのだが……。
 
「エクソシスト 信じる者」は1作目と同様に、子どもに悪魔がつき、親がそれを救おうとする「親子の物語」になっている。本作では被害に遭う子どもが2人なので、当然親も2組(ビクターがシングルファザーなので3人)いて、子を思う気持ちこそ同じであるものの、それをどう行動に移すかは〝二者二様〟、それぞれの奮闘が涙ぐましい。はじめは医学的治療に頼るが、それでは解決の糸口を見いだせず、最終的に「宗教的治療」を選ぶという第1作「エクソシスト」の流れと同じ運命をたどる。


新たな視点でスケールアップした儀式

その「悪魔祓い」の形式に、本作オリジナルのポイントがあるのだ。1作目では主にカトリックの観点から「悪魔祓い」を描いているが、本作では複数の信仰を取り入れており、儀式を行う者としてカトリック教会の神父だけではなく、ペンテコステ派の牧師、ヒーリングを行うビーハイブ、バプテスト教会の牧師という四つの信仰の指導者が登場している。さらに隣に住む看護師が加わって、儀式の場へ医療機材を持ち込んでくる。
 
悪魔につかれた少女が2人、その親が3人、看護師が1人、加えて聖職者たちという大所帯での「悪魔祓い」。複数の信仰の観点からの検証という新しい切り口を用意し、ビジュアルもスケールアップさせている。


ホラーの皮をかぶった宗教映画

ただ、「エクソシスト 信じる者」においても土台にあるのは、「悪魔祓い」が「宗教的治療」であるという要素だ。この視点で見れば、シリーズを通して「エクソシスト」は「ホラーの皮をかぶった宗教映画」と言えるかもしれない。
 
「エクソシスト」シリーズには、実体のないものが身近な人について豹変(ひょうへん)させてしまうという、えたいの知れない恐怖感がある。そのエッセンスは悪魔という宗教観に起因するものだ。「信仰」があるからこそ恐怖を感じるし、「信仰」によってそれを打ち破れるというのが、シリーズにおける「悪魔祓い」の特徴だ。
 
第1作「エクソシスト」でのカラス神父は、精神科医であったことから医療と宗教のはざまで「信仰」を試された。「エクソシスト 信じる者」の登場人物たちも、儀式への信頼・信仰を持つことで、悪魔からの誘惑に対抗しうる強い心を手に入れる。それを念頭に置いて本作を鑑賞すると、サブタイトル「信じる者(原題:Believer)」の重みが、非常に増して感じられるのである。

ライター
芦田央

芦田央

あしだ・ひろし ライター。北海道札幌市出身。バックパッカー、音楽レーベル、証券会社、広告代理店勤務を経て、趣味だった書くことを仕事に。note企画 「#映画感想文 with TSUTAYA CREATORS' PROGRAM」にて最優秀賞を受賞。同プログラムの初代公式ライターに就任。

新着記事