「マン・フロム・トロント」Netflixで独占配信中

「マン・フロム・トロント」Netflixで独占配信中

2022.7.17

「マン・フロム・トロント」凸凹殺し屋バディーの笑いとアクション シリーズ化期待:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

ひとしねま

須永貴子

「エクスペンダブルズ3  ワールドミッション」や、「ヒットマンズ・ボディガード」と続編の「ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード」などを監督したパトリック・ヒューズの最新作「マン・フロム・トロント」が、Netflixで独占配信されている。ケヴィン・ハートとウディ・ハレルソンが主演するこのアクションコメディーは、COVID-19の感染拡大により撮影が延期され、他作品との調整により劇場公開日も度々変更に。最終的にNetflixが権利を買い取り、2022年6月24日に配信された。
 

公開延期から曲折経て配信へ 主役も交代

「ハリウッド・リポーター」によると、当初キャスティングされていたジェイソン・ステイサムは、幅広い観客層を想定している製作陣とレーティングにおける意見が合わず、クランクインの6週間前に降板。ステイサムの代役として、ウディ・ハレルソンが急きょキャスティングされた。
 
その役柄は、〝マン・フロム・トロント(トロントから来た男)〟という通り名を持つ、腕利きの殺し屋だ。幼い頃に目の前で祖父が熊に食べられて以来、天涯孤独。23以上の武術の達人。愛車は1969年型のダッジチャージャー。19世紀のアメリカの詩を暗号として使用。誰もその顔を知らない幽霊のような存在だ。有能で寡黙、そして孤独なキャラクターは、たしかにジェイソン・ステイサムが演じている姿が容易に想像できる。
 

すご腕と愚か者 不協和音奏でつつミッション完遂

そのマン・フロム・トロントの相棒となるテディを演じるのはケヴィン・ハート。バージニア州の歴史深い街ヨークタウンに、愛する妻ロリと暮らすテディは、フィットネスジムの営業として働いて10年になる。いいヤツだが、何をやっても失敗ばかり。口先ばかりで行動を先延ばしにしたり、何かを始めてもいつのまにかフェードアウトしてしまったりする性格が、周りの人たちから「テディる」と表現されている。ジムのチラシを作ったが、住所と電話番号を掲載し忘れて印刷したことが原因で、とうとうクビになってしまう。
 
そのテディがまたしても「テディった」せいで、殺し屋のマン・フロム・トロントと間違えられて、FBIに協力する羽目になる。マン・フロム・トロントは、自分のふりをしてターゲットに接触する〝イディオット・フロム・ヨークタウン(ヨークタウンから来た愚か者)〟ことテディと行動を共にして、自分のミッションをクリアすることを目指す。
 
しかしFBIはもちろんのこと、マン・フロム・トロントの雇用主である〝ハンドラー〟が保険のために送り込む新たな殺し屋〝マン・フロム・マイアミ〟が2人の行く手を妨害する。〝不言実行〟のマン・フロム・トロントと〝有言不実行〟の間抜けなテディが、不協和音を奏でながら笑いを生み出し、徐々にお互いの人生にプラスの影響を与えていく。
 

ウブなハレルソン 新たな魅力

生きる世界も性格も正反対の2人がバディーになっていくヒューマンコメディーとして、バディーもの好きには自信をもっておすすめしたい。また、ウディ・ハレルソンの新たな魅力も引き出した。とある女性とのロマンチックな展開に直面したときの、マン・フロム・トロントの反応は、見ているこちらの頬が赤らむほどウブい!
 
そしてヒューズ監督が愛するアクションに関しても、趣向を凝らしたシーンを詰め込んでいて飽きさせない。カーチェイスあり、高度3万フィートでの飛行機内でのバトルあり、イベント会場での銃撃戦あり。マン・フロム・モスクワ、マン・フロム・タコマといった刺客が集まるクライマックスは、テディの職場だったフィットネスジムで。ボクシングのリングやトレーニングの道具、オノやチェーンソーなど、銃だけではない武器を使っての大乱闘を、1台のカメラを前後左右にダイナミックに動かして撮るワンシーンワンカット(風)の3分間に及ぶアクションシーンに、Wolfmotherの曲「Joker and the Thief」がばっちりハマっている。
 

日本代表山P 短い出番で印象強烈

すべての敵を片付けたと思った2人の前に立ちふさがるのは、日本からようやく駆けつけた最後の刺客、マン・フロム・トーキョーだ。演じるのは山下智久。出演シーンは短いが、刀を手にした立ち姿が美しく、東洋のミステリアスなアサシンとしての完成度が非常に高い。だからこその〝おいしい〟使われ方が非常に効果的だ。
 
Netflixでは公開から4日でその週の再生時間世界第1位を獲得。テディ&マン・フロム・トロントのシリーズ化についてインタビューで質問されたヒューズ監督は、否定はしていない。この好成績とキャラクターの強さがあれば、「マン・フロム……」の続編だけでなく、「ウーマン・フロム……」や「ヒットマン・フロム……」、なんなら「ボディガード・フロム……」といったスピンオフも夢ではないだろう。
 
Netflixで独占配信中。

ライター
ひとしねま

須永貴子

すなが・たかこ ライター。映画やドラマ、TVバラエティーをメインの領域に、インタビューや作品レビューを執筆。仕事以外で好きなものは、食、酒、旅、犬。

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