毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2021.4.15
ザ・スイッチ
とある13日の金曜日、憂鬱な毎日を送る少女ミリー(キャスリン・ニュートン)が連続殺人鬼ブッチャー(ヴィンス・ヴォーン)に遭遇。ブッチャーが凶器として持ち出した古代の短剣による不思議な作用で、2人の体が入れ替わってしまう。女子高校生の姿を得たブッチャーは新たな殺しの獲物を物色し、中年男に変貌したミリーは自分の体を取り戻そうとするが……。
ホラー映画にはヒロインの絶叫や登場人物の派手な死に様といったお約束の見せ場があるが、演出のさじ加減でコメディーに変わりうる。そんなジャンルの特性を、巧妙かつ最大限に生かしたハリウッド映画だ。何ともばからしい設定だが、外見と中身のギャップを強調したヴォーン、ニュートンの芸が細かいドタバタ演技につい大笑い。1990年代に隆盛を誇った「スクリーム」などの青春映画+スラッシャー(刃物を用いた殺人鬼もの)の新機軸とも言えそうだ。クリストファー・ランドン監督。1時間42分。東京・TOHOシネマズ日本橋、大阪・あべのアポロシネマほか。(諭)
異論あり
女子高生と中身が入れ替わったオッサンという設定はベタだが、ツボを押さえたギャグはやはり笑える。ただ、映画の基本はホラー。冷凍カプセルとかテニスラケットとか、犠牲者の死に方にも笑いの要素を入れようとはしているものの、血や暴力が苦手な人はご用心を。(勝)