Summer of 85 © 2020-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-France 2 CINÉMA–PLAYTIME PRODUCTION-SCOPE PICTURES

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2021.8.19

Summer of 85

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

フランソワ・オゾン監督が10代の時に感銘を受けたエイダン・チェンバーズの小説「おれの墓で踊れ」を映画化した。1985年、仏ノルマンディーの海辺の町で暮らす16歳のアレックス(フェリックス・ルフェーヴル)がセーリング中に転覆し、二つ年上のダヴィド(バンジャマン・ヴォワザン)に救われる。あどけないアレックスは奔放なダヴィドと惹(ひ)かれ合うが、彼らの恋は6週間で永遠の終わりを迎えてしまう。

陽光きらめくひと夏の恋物語だが、序盤からダヴィドの死がほのめかされ、アレックスは中盤の悲劇的な出来事によって絶望のどん底に突き落とされる。オゾン監督は不器用で未熟な思春期の少年が経験する初めての恋の喜び、耐えがたい喪失の痛みをまっすぐに描いた。その途方もなく振れ幅の大きな感情の軌跡を紡ぎ上げた映像世界は、時代性を超越したみずみずしさに満ちあふれている。あえて青春映画の〝古典〟と呼びたくなる好編。1時間41分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪ステーションシティシネマほか。(諭)

ここに注目

オゾン流の陰りのある初恋物語をノスタルジックなファッションや夏の海辺の景色が彩り、切なさはより色濃いものに。ザ・キュアーの楽曲など舞台となる80年代の音楽はもちろんのこと、ヘッドホンから流れるロッド・スチュワートの「セイリング」の余韻がいつまでも残った。(細)