「ロ・ギワン」より © 2024 Netflix, Inc.

「ロ・ギワン」より © 2024 Netflix, Inc.

2024.3.11

人気俳優ソン・ジュンギの目の演技が素晴らしい映画「ロ・ギワン」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、村山章、大野友嘉子、梅山富美子の4人です。

大野友嘉子

大野友嘉子

ソン・ジュンギとチェ・ソンウン共演の韓国映画「ロ・ギワン」が3月1日からNetflixで配信されている。
 


北朝鮮からの脱北者が難民申請を受けるためベルギーに入国

ロ・ギワン(ソン・ジュンギ)は北朝鮮出身の脱北者。中国で母親と身を潜めていたものの、不運が重なり、母親は交通事故で命を落とす。叔父の助けで偽造パスポートを使ってベルギーに入国し、難民申請を受けようとする。
 
持ち物は母親がくれた財布と母親と平壌で撮影した写真、そしていくらかの現金。現金は、叔父が母親の死体を病院に売った金だ。北朝鮮出身者であることや名前を証明する物が何一つない状況のため、難民申請の審査は難航する。
 
難民と認められなければ、北朝鮮に強制送還される。絶体絶命のなか、ギワンは審査結果を待つしかなかった。
 
寒さと飢え、人種差別による暴力を受けながらも、ギワンは自分を守るために亡くなった母親を思い浮かべて懸命に生きようとする。そんな折、生きる希望をなくしたマリ(チェ・ソンウン)と出会う。マリは、コインランドリーで眠るギワンから、母親の形見である財布を盗んだのだった。
 

原作は韓国での受賞もあるチョ・ヘジンの長編小説

原作はチョ・ヘジンの長編小説「ロ・ギワンに会った」。英語、ロシア語に翻訳され、韓国の申東曄文学賞を受賞した話題作だ。日本語訳は2月に刊行されている。
 
ロマンス色が強い後半に比べて、前半はギワンの苦しみがこれでもかと描かれている。
 
季節は極寒のブリュッセル。ギワンは公衆トイレで寝泊まりしたり、公園でたき火をしたり、小銭稼ぎのために瓶を集めて回る。脱北できたとしても、その先にあるいばらの道、脱北者に限らず難民を待ち受ける不安定で過酷な生活が緻密に描かれている。
 

前半はギワンの苦しみが描かれ、後半はロマンス色が強い

ソン・ジュンギと言えばドラマ「太陽の末裔」や「ヴィンチェンツォ」での華やかな役柄のイメージが強いが、本作では一転、弱々しい青年を演じた。
 
すすけた顔と洋服でブリュッセルの街をさまよい、自分よりはるかに体格の大きい白人男性に目を付けられて殴られる。つらくて見ていられない場面が多い。だけど、絶望の淵にいながらも生きようとするギワンの真っすぐな目に、一筋の光が見える。目の演技が圧巻だ。
 
マリとの関係が深まる後編は、好みが分かれるかもしれない。悪縁が良縁に変わるわけだが、マリの父親の援助でギワンの状況が好転すると、マリが抱える災難に巻き込まれてしまう。1歩進んでは、2歩後退する感じがジリジリする。ギワンにとって難民と認められることが最優先課題であるのだから、はっきり言ってトラブルメーカーのマリに関わっている場合ではない。
 
とはいえ、私は後編が嫌いではなかった。苦境の中でも人を愛し、相手のために自分を犠牲にすることだってできるのだという、人間賛歌が見て取れるからだ。
 
「ロ・ギワン」はNetflixで独占配信中

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ライター
大野友嘉子

大野友嘉子

おおの・ゆかこ 毎日新聞くらし科学環境部記者。2009年に入社し、津支局や中部報道センターなどを経て現職。へそ曲がりな性格だと言われるが、「愛の不時着」とBTSにハマる。尊敬する人は太田光とキング牧師。ツイッター(@yukako_ohno)でたまにつぶやいている。