「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

2021.8.05

チャートの裏側:若年層が左右する夏興行

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

新型コロナウイルスの感染爆発下、東京オリンピック開催の中で、夏興行が本番を迎えている。1日午後、東京・新宿のシネコンに赴けば、多くの作品が満席、あるいはそれに近い興行になっていた。素直に喜べるわけはないが、安堵(あんど)感を抱いたのも事実だ。ちょっと息をついた。

その興行状況には、まず二つの理由がある。この日が毎月1日の割引デーであることと、座席のチケットは間隔を空けて販売しており、すぐに席が埋まってしまうことだ。だから、本来の夏興行として集客率が上がっているのかどうか。その1館だけでは分からないこともある。

では、全国集計ではどうか。大ヒット2作品の、1日を含む土日の興行収入集計を見る。「竜とそばかすの姫」は3億7000万円。「東京リベンジャーズ」は2億3000万円だった。前週土日比では、3週目の前者が70%ともう少しだが、4週目の後者は86%で、それほどの落ちはない。

初の夏興行に挑む「クレヨンしんちゃん」の新作は、土日2億4000万円。ファミリー層の集客が、少し戻った感はある。ただ全体では、おととしの夏興行の数字を40%以上も落とすという。この夏、わが国はかつて経験したことのないような未知の危機を迎えようとしている。映画興行を含め、特に若い層のマインド、行動が気になる。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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