誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。
2022.12.20
まさに人生のサウンドトラック!「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」
ミュージシャンの伝記映画はほぼ同じフォーマットでできている。
不幸な幼少時代。
両親の不仲。
恋人やセクシュアリティーの問題。
スター街道をまっしぐらに上り詰めるや、レコード会社、プロモーター、マネジャーの搾取。
おまけに身内が大金を使い込み、追い打ちで愛した人に足を引っ張られ離別する。
酒やドラッグに溺れる。
そして何よりうつり気なファンがとどめを刺す。
そのほとんどがこのフォーマットでできあがっている。
それが分かっていても人々はなぜこんなにもミュージシャンの伝記映画を愛し、劇場に足を運ぶのだろうか。
それはそんなフォーマットさえもフロントアクトに過ぎないと思わせる「音楽」があるからだ。
前置きが長くなった。
この「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY」も彼女が世に送り出したビッグ・チューンが全てを凌駕(りょうが)し、圧倒的な感動の波を作り上げている。
「I Will Always Love You」
「Greatest Love Of All」
「I Wanna Dance With Somebody」
「Saving All My Love For You」
「So Emotional」
「How Will I Know」
「I’m Your Baby Tonight」
「Where Do Broken Hearts Go」 ・・・・・・
名曲のすべてをリアルタイムで聞いた僕にとってホイットニーはまさに人生のサウンドトラックだと確信させた。
アメリカ人でもないのにスーパーボウルで独唱した「星条旗」の歌声に涙した。
音楽に包み込まれたと感じたのだ。
そんな絶頂から彼女の下り坂が始まるのだが。
その苦しい展開の終盤にさらに僕をハッとさせたのが「アリシア・キーズ」のアナウンス。
確かにホイットニーの死が迫る頃、僕のCDライブラリーの数はアリシアがホイットニーを超えていた。
僕もうつり気なファンの一人だったのだ・・・・・・。
誰がホイットニーを殺したのか?
もう一つ付け足すと音楽伝記映画のフォーマットには二つの選択肢がある。
それは長く生きたか、短く終わったかである。
悲しいかな、ご存じのようにホイットニーは後者である。
そんな彼女の人生。
ぜひとも今週末劇場にてご覧ください。
追伸:1990年1月20日福岡国際センター公演で僕はホイットニーのコンサート会場でアルバイトをした。それも楽屋付き。豪華なケータリングが完備していたのに、彼女がチーズバーガーを食べたいと、僕がマックまで買い出しに行ったことを思い出した。