ダンスを踊るRhythm

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2022.11.28

共感と気づきがいっぱい! 現役ダンサーが見た青春ダンスムービー「ステップ・アップ」

Y2K=2000年代のファッションやカルチャーが、Z世代の注目を集めています。映画もたくさんありました。懐かしくて新しい、あの時代のあの映画、語ってもらいます。

Rhythm

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「ステップ・アップ」を鑑賞後、「これは僕が見るべく、引き寄せた作品かもしれない」という不思議な気持ちになりました。
僕はリズム。ダンサーをやっています。バックダンサーやテーマパークのダンサー・パフォーマンスなど、さまざまな場で活動してきました。現在はYouTubeをメインに活動しています。

共感の嵐! ヒロインと同じ環境でダンスを学んだ僕

 同作の舞台となるのは芸術学校。
僕は大阪芸術大学の出身で、ヒロインであるノーラと同じようにダンスやバレエなどを学び、プロのダンサー、表現者になるために同級生と切磋琢磨(せっさたくま)してきました。
だからノーラが置かれている環境はビビッドに理解できたし、強く共感した部分もあります。
また、作品の背景から2000年代のカルチャーを感じることができました。

ダンサーの命取り〝けが〟がストーリーを展開させる

この映画最大の見せ場となるのが、ノーラの卒業制作。
彼女のダンスパートナーがけがをしてしまい、出演を辞退してしまうシーンでは自分の経験がよみがえりました。
映画内ではさほどフィーチャーされていませんでしたが、この世界ではけがは命取り。スキルの低下だけでなく、今後のダンサー人生のハンディになる場合もあるほどです。
僕は大学1年の秋に右肩を脱臼し、長くリハビリに通っていたことがあるんです。だからダンスパートナーの気持ちに、当時の自分を重ねてしまいました。
 
ノーラは新しいダンスパートナーを探すオーディションを行いますが、なかなか求める人材には出会えず、頭を抱えてしまいます。
 
それを見ていたのが主人公のタイラーです。
彼はある事件を起こしたことで、裁判所から、ノーラが通う学校への奉仕活動を命じられ清掃員として働いていました。
タイラーは自分のダンススキルならノーラの求めるものに応えられると言い、彼女のダンスパートナーとなります。

ジャンルの違いや葛藤を乗り越えた先に見える世界は!?

しかし、二人はストリートダンス(HIPHOP)とクラシックダンス(バレエ、シアター)でダンスジャンルが異なっています。
そもそもこの2つのジャンルは音楽性から違ってきます。
ストリートダンスは特有の強いビートにのり、より自由に踊ることのできるジャンル。
一方、ピアノなどのメロディーにのせて流れるような動きを行い、より統一された動きを得意とするのがクラシックダンスの特徴だといえます(ジャズ、モダンダンスにおけるインプロビゼーションを除く)。
こうしたスタイルの違いやお互いのダンスへの価値観の違いでぶつかることになるのです。
 
そんなシーンも僕の大学生活と重なりました。
作品作りを行う場では、同級生同士の協力が不可欠です。
しかしそれぞれが、ダンサーとしてのプライドやダンスジャンルに対する信念を持っていたため、ぶつかってばかりでした。実際、人間関係が原因で大学を去る仲間も少なくありません。
僕はダンスの中でもストリートダンスをメインとし、中でもスタイルヒップホップを得意ジャンルとしていました。
 
しかし僕が通っていた舞台芸術学科はプロのダンサーを育てる場であったため、ストリートダンスの他にもバレエ、ジャズダンス、コンテンポラリー、タップダンスなども学ばなければなりませんでした。
タイラーのように、自分の根本であるストリートダンスの常識がひっくり返るような環境で4年間学んだのです。
幼少期からバレエを行ってきた生徒と比べれば素人同然。0からのスタートであり、最初の頃はまったく踊れない自分に嘆き苦しみました。
 
作中のタイラーも、ダンスジャンルの違いや葛藤から一度リハーサルを投げ出し、ダンスパートナーを辞めてしまいます。ですが友人からの〝何気ない一言〟で、これまで物事を成し遂げずに生きてきた自分に気づかされます。そしてノーラと和解し、再びダンスに打ち込んでいきます。
 

未知の領域に踏み出す強さは、夢の実現に必要な試練

本作によって、表現者は自分の好みだけではなく、人や学びから多くの影響を受けることで表現力が形成されていくということを再確認させられました。
僕自身も大学で多くのダンス、芸術を学んだことが幅広い分野での仕事につながっています。他にも、自ら作品を作る能力や、演出構成をするための力も学生時代の経験があったからこそだと思います。
 
専門外のことにぶつかったり、未知の領域に踏み出したりすることは夢をかなえていく上で大切な試練です。作中のタイラーとノーラも、お互いのダンスジャンルを合わせた振り付けで作品を高めていきます。
未知の要素を自分に反映させることで、新しい物を世に生み出す。これこそがクリエーティブであり、表現者のあるべき姿なのではないかと感じました。
まさに「ステップ・アップ」するための教本。どういうスタンスで芸事に打ち込むべきなのかをこの作品は教えてくれました。
 

現代にも息づく、ダンスカルチャーのルーツを感じて!

ストーリー以外にも、本作ではこの当時のダンススタイルやオールドスクールのカルチャーを見ることができます。
これらがなければ今のダンスは間違いなく異なった物になっていたでしょう。
彼らのようにさまざまなダンスの融合や、クリエーティブなムーブメントがなければ今のダンスは生まれていません。彼らのようなルーツの存在があったからこそ、今たくさんの若いダンサーたちがエンターテインメントの世界を目指すキッカケになっているのです。
 
彼らが身にまとうストリートファッションも現代から見れば憧れの象徴。今では万人に受け入れられるファッションジャンルになるほど、世の中を席巻しています。
クリエーティブを知り、今あるダンスカルチャーのルーツを理解するためにも、これから表現者を目指す人たちにぜひとも見てほしい作品です。

ライター
Rhythm

Rhythm

りずむ(ダンサークリエイター)
大阪芸術大学舞台芸術学科ポピュラーダンスコース卒業。
卒業後、ユニバーサルスタジオジャパンでパレードダンサーとして出演。その他矢沢永吉、西野カナ、関ジャニ∞、SnowMan、SixStonesなどアーティストのバックダンサーを務め、現在YouTubeをメインに活動中。
RedLinX https://www.youtube.com/channel/UCQVZJQHPNRkTGV1dzw2aUdQ
Rhythm https://www.youtube.com/channel/UCWlTteWTWPg8caUVfVXJj6g

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