チャートの裏側

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2021.11.11

チャートの裏側:シンプルな世界に夢中

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

驚きの順位だと思う。邦画アニメーションの「映画 すみっコぐらし」の第2作が、ディズニー配給のマーベル娯楽大作「エターナルズ」に次いだ。3日間の興行収入は、前者が2億5000万円、後者が4億2000万円。差があるように見えるが、以下のデータで驚きが説明できる。

公開館は「すみっコ」が184スクリーン、「エターナルズ」が813スクリーンだ。製作費の差はあまりに大きく、比較するのさえためらう。上映時間にもあぜんとする。前者が65分、後者が156分。それが何と、7日の日曜日だけだが、「エターナルズ」を動員数で超えてしまった。

「すみっコ」は、中身から上映時間まで、実にコンパクト、シンプルに作られている。キャラクターのビジュアルは動物や食べ物などが、一貫して丸っこく、目は点だ。テーマである「夢」の大切さ含め、過剰なもの、余分なものが一切描かれない。この世界観はただ事ではない。

客層は、幼稚園児から小学校の低学年生、付き添いの親たちが目立つ。子どもたちは、可愛いキャラクターに夢中のようだが、それだけではないと思う。本作の独特な世界から、いったい何を感じとるのだろうか。子どもたちは館内で全く騒がず、静かな態度で映画に集中していた。これが、なかなかスリリングな映画館体験なのであった。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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