ベル・エポックでもう一度 ©2019 - LES FILMS DU KIOSQUE - PATHÉ FILMS - ORANGE STUDIO - FRANCE 2 CINÉMA - HUGAR PROD – FILS - UMEDIA

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2021.6.10

ベル・エポックでもう一度

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

イラストレーターとしての仕事を失い、妻(ファニー・アルダン)にも相手にされなくなってしまったヴィクトル(ダニエル・オートゥイユ)。そんな父を励まそうとした息子(ギョーム・カネ)からの贈り物は、戻りたい過去を映画のように再現する体験型のエンターテインメントサービスだった。1970年代に戻ったヴィクトルが、その体験で見つけたこととは?

俳優として「タイピスト!」などに出演し、コメディアン、脚本家としての顔も持つニコラ・ブドス監督の下、フランスの名優が集結。ファンタジー色の濃い独創的な設定だが、細部まで作り込まれた時代の空気を伝えるレトロな映像により、しっかりと世界観が構築されている。視点を変えることでときめきと愛を再発見する人間ドラマとしては、紋切り型から抜けきれなかった印象も。このキャストをそろえたなら、ヴィクトルを中心にもっとキャラクターを深掘りしてほしかったと不満も残った。1時間55分。東京・シネスイッチ銀座(12日から)、大阪・シネ・リーブル梅田(25日から)ほか。(細)

ここに注目

是枝裕和監督の「ワンダフルライフ」風のしんみりしたファンタジーかと思いきや、街角ごと再現したセットで思い出をよみがえらせる豪華な仕掛け。バックステージのトラブルなどの逸話が交錯する展開は慌ただしいが、現在と過去、現実と虚構がごちゃ混ぜの映像世界が楽しい。(諭)