SNS 少女たちの10日間  ©  2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia,  Helium Film All Rights Reserved.

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2021.4.22

時代の目:SNS 少女たちの10日間 むき出しの欲望が目の前に

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。


チェコで製作された衝撃のドキュメンタリー。童顔の女優3人(18歳以上)が12歳と称してSNSで友達を募集し、接触してきた人たちと実際にやりとりをした10日間の記録だ。男たちのむき出しの欲望に、43歳の私でも吐き気とショックから立ち直るのに時間を要した。覚悟して見てほしい。

「12歳の少女」たちのアカウントには続々と成人男性が集まってきた。そしてその多くが、性器の写真を送ってきたり性的な要求をしたりしてきた。中には脅迫する人も――。そういえば私が高校生の頃、東京では私たちの下着が高値で売れると聞いた。田舎ではその真偽も手段も分からず、それを欲しがる人の実像も見えなかったが、それは幸運だったのだ。今、その手段は誰の目の前にもあり、欲しがる人と直接に接触できる。それがどんなに恐ろしいことかを、ニュースなどから想像する以上に生々しく体感した。

女優の一人が撮影中に泣いてしまう場面がある。スタッフも、見ている私も涙が出ていた。それが怒りや悲しみによる涙ではなかったことが唯一の救いだ。バーラ・ハルポヴァー、ヴィート・クルサーク監督。1時間44分。東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(久)