「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

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2021.9.02

チャートの裏側:意識変化 再鑑賞で応援

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

8月末であってもお盆興行が終われば、各作品の動員は一気に下がる。非常時の今年も変わりない。ところが、この土日に前週の興行収入を上回った作品がある。トップの「僕のヒーローアカデミア」だ。前週比186%というから驚く。ここに最近の邦画アニメの傾向が見える。

映画館に行くともらえる入場者プレゼントの存在である。これを目当てに、すでに作品を見た人が、少なからず映画館を訪れる。いわゆる、リピーターだ。先週末からは、座席の振動などが売りの4D版上映も始まり、こちらの効果も見逃せない。二段構えで観客が増えた。

原作者が描いた4人のキャラクターが掲載された入場者プレゼントの複製色紙は魅力的だった。ファンが欲しがるのがわかる。リピーターは20代から40代までの女性が多いらしい。このような傾向は、特定のアニメに限られる。ファミリー層主体のアニメでは、こうはいかない。

一つ疑問があった。リピーターはもらうものをもらったら、映画を見ずに帰る人もいるのではないか。以前、そう聞いたことがある。改めて確認すると、映画はしっかり見るという。当然といえば当然だ。加えて最近は、目的のアニメを金銭面も含めて、応援する意識も強いそうだ。映画を応援する。ちょっとした興行の地殻変動ではないか。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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