チャートの裏側

チャートの裏側

2022.5.06

チャートの裏側:客層を広げる道は

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ゴールデンウイーク(GW)という言葉は映画界から生まれた。よく知られていることだ。これを踏まえるなら、大型連休時には、年代も階層も違う多くの人たちが映画館を訪れてほしい。映画界発の言葉には、そうした意味が込められていたと思うが、近年ではそうなっていない。

データを見る。2015年から21年まで(20年は除く)の毎年のGW興行トップ3作品を調べた。全18本のうち、「名探偵コナン」が6本、ディズニー作品が6本あった。両者で約70%だ。ヒット傾向が偏っている。客層も固定的に見える。もっと、ヒットが分散する道はないのか。

連休の形を考えたい。GWは行事や慣習が多い正月休みとは違う。仕事に従事している人は、比較的休みを有効に使える。ここを主眼に作品傾向が偏らない編成を望む。30代以降からシニア層の人たちへ向けた多様な中身をもった作品の提供だ。もちろん、簡単なことではない。

最近、あるシネコンの営業担当者は「こんな作品しか上映していないのか」と、年配の方に言われたという。自分が見たいと思っている作品が少ないという意味だろう。休みだから「映画でも見てみようか」。そのような気分の高まりがあった時、観客側の思いをくみ取ることが肝要だ。好みをめぐる広範囲な調査も必要と感じる。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)