マーメイド・イン・パリ ©2020 Overdrive Productions Entre Chien et Loup Sisters and BrotherMitevski Production EuropaCorp Proximus

マーメイド・イン・パリ ©2020 Overdrive Productions Entre Chien et Loup Sisters and BrotherMitevski Production EuropaCorp Proximus

2021.2.11

マーメイド・イン・パリ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

バーで働くガスパール(ニコラ・デュボシェル)はある夜、人魚のルラ(マリリン・リマ)と出会う。失恋をきっかけに恋する気持ちを捨てた男と、美しい歌声で男たちを魅了して命を奪ってきた人魚。出会うはずのない二人が惹(ひ)かれあうが、夫をルラに殺された女医のミレナ(ロマーヌ・ボーランジェ)が現れる。

パリを舞台に人間と人魚の恋の物語を描いたのは、音楽、小説、映像の世界でマルチな才能を発揮し、本作が長編実写監督作デビューとなるマチアス・マルジウ。手作り感あふれるアニメーションからノスタルジックなおもちゃのようなセット、ルラの危ういほどの愛らしさを際立たせるヘアメークに至るまで監督のセンスがぎゅっと詰め込まれ、何度も観(み)たくなる魅力がたっぷり。世界観が徹底されている映像だからこそ、最後までファンタジーに浸ることができる。物語にも残酷すぎないほどよくダークな隠し味が加えられ、まさに大人のためのおとぎ話ともいえる作品だ。1時間42分。東京・新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマほか。(細)

異論あり

「アメリ」などのジャン・ピエール・ジュネ作品を思わせる美術や小物への過剰なこだわりと、レトロでポップな世界観が見どころの一作。その半面、人魚が歌声で男たちの命を奪う連続殺人鬼だという設定がさほど生かされていなかったり、スリルや情感の高まりはいまひとつ。(諭)