「ドクタースランプ」Netflixで独占配信中

「ドクタースランプ」Netflixで独占配信中

2024.3.23

パク・ヒョンシク&パク・シネ主演で2人の男女の挫折と再生を描いたコメディードラマ「ドクタースランプ」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

梅山富美子

梅山富美子

韓国ドラマ「ドクタースランプ」(全16話)がNetflixで配信中だ。日々懸命に生きる現代の人の心にじんわりと響き、癒やしとなる作品となっている。(以下、本編の内容に触れています)
 
人気俳優のパク・シネとパク・ヒョンシクが共演した本作は、学生時代に学年1位の成績の座を争ったジョンウ(パク・ヒョンシク)とハヌル(パク・シネ)の物語。医者となるも人生のどん底期に突入した2人が偶然にも再会し、支え合って乗り越えようとする姿を描く。
 


突然の挫折を味わった2人の男女の物語

ジョンウは、〝セクシーすぎる〟医師として有名になり若くして成功。しかし、執刀した手術で出血死が起こり人生は一転。汚名を着せられ、借金まみれで周囲にいた人々も離れてしまう。
 
一方、学生時代に脇目もふらず勉強ばかりの日々を送っていたハヌルは、大学病院で医師として働くも理不尽なことばかり。上司の失敗をなすりつけられ、論文の名前を消され、病院での孤立は深まり……と心を削られ、ついに「うつ病」と診断される。
 
順風満帆だったジョンウと、一心不乱に働いてきたハヌルに訪れた突然の挫折。それぞれ心に深い傷を負った2人の描写には心が締め付けられる。「あんたがうつ病のわけがない」と怒る母親(チャン・ヘジン)の言葉にハヌルはさらに追い詰められ、ジョンウも本当は心が折れかけているが平気なふりをし続ける。
 
ジョンウとハヌルがスランプから立ち上がることが物語の軸であるからこそ、やがて恋愛に発展していく2人の関係も一進一退。日常もままならないこともあり、付き合ってもすぐに「恋愛できる状況じゃない」とハヌルはジョンウを突き放してしまうことも。
 
重いテーマながらも、コメディーパートでパク・ヒョンシクとパク・シネが本領発揮。「相続者たち」(2013年)以来、約11年ぶりの共演となった2人は、息の合った演技で笑いを誘う。ちなみに、2人は32歳と34歳とは思えぬ(洗練すぎる見た目ではあるものの)違和感のない制服姿も披露。
 
パク・ヒョンシクは、ハヌルのことになるとムキになるジョンウを熱演。ハンサムで優秀であることを自覚している、という一歩間違えば鼻につくようなキャラクターを魅力的で憎めない人物につくり上げた。特に、彼女に振り回され布団で悶絶(もんぜつ)する姿は必見だろう。
 
さらに、パク・シネの演技の引き出しの多さにあらためて感心。第2話の終盤の涙のシーンは、これまでのつらい気持ち、ジョンウへの共感、安心感などさまざまな感情が入り乱れており、心が何重にも揺さぶられる。
 
ほかにも、ジョンウを気にかけるテヨン(ユン・バク)と、ハヌルの親友ホンラン(コン・ソンハ)の大人同士の恋愛がクスッと笑える。ユン・バクは「気象庁の人々:社内恋愛は予測不能?!」でもどこか情けない男性を演じていたが、今回もハマり役だった。
 

心を癒やす過程の丁寧な描写に共感を覚えるだろう

本作は、ジョンウとハヌルが心が折れてしまいそうなとき、追い打ちをかけるような残酷な展開にならないのがリアル。心を癒やす過程が丁寧に描かれ、ドラマチックすぎないからこそ、仕事で燃え尽きてしまったハヌルや、無理をしてでも復帰しようとするジョンウに共感してしまう人もいるだろう。
 
また、ジョンウの「自分ではどうすることもできないこともある」といった考えは、本作の核心をついているようだ。優秀で努力家のジョンウとハヌルでさえ、報われずに人生のどん底に突き落とされる。ジョンウの手術の事件の真相を追うサスペンス要素も〝一件落着〟と一言で片付けることができない結末を迎える。
 
「自分ではどうすることもできないこと」が、今後も起こる可能性があると分かりつつも、2人が新たな一歩を踏み出そうともがく。その姿に勇気をもらえる本作は、日々を頑張ることも、立ち止まることも、心を休ませることも、悪いことではないと思わせてくれるドラマだ。
 
Netflixシリーズ「ドクタースランプ」は独占配信中

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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