ひとしねま

2023.3.24

仮面の陰に自身の決意

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

庵野秀明監督が手掛ける「シン」作品の最新作である。「シン・仮面ライダー」だ。「シン」は、少なからぬ人々に多大な期待を与える。これまでの作品の興行が物語る。作品の長きにわたる人気を土台に、監督の独特な新展開への期待と、その成果が興行を押し上げてきた。

今回の「シン」は、自身の「身」を意味しているのではないか。中身の骨格に、監督自身が映画を作り続けることへの決意があふれる。なぜ、自分は有名なタイトルに連なるエンタメ作品を手掛けるのか。その問いかけと実践が、映画の中身とシンクロする。とてつもない挑戦だ。

複雑な事情をもつヒロインは、敵=ショッカーと戦うことになる仮面ライダーに覚悟を問う。仮面ライダーは、仮面をつけることで強力なパワーを手にするが、優し過ぎる。不慮の死を遂げた父の優しさを引き継ぐ。覚悟、優しさともに、映画の創作姿勢、中身の根幹をなす。

ただ、「身」的な装いが横溢(おういつ)し過ぎる感はあった。エンタメの作風そのものに期待を抱いた観客たちはどう受けとるか。「身」は、私性、精神性にも重きを置くようになるので、堅苦しく感じる人も出てくるかもしれない。最初の3日間の興行収入は5億4000万円。「シン」の効力は申し分ないが、「真」の成果が判断できるのはこれからだ。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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