「シャイロックの子供たち」  © 2023映画「シャイロックの子供たち」製作委員会

「シャイロックの子供たち」 © 2023映画「シャイロックの子供たち」製作委員会

2023.2.17

「シャイロックの子供たち」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

池井戸潤の小説の映画化だが、物語は脚本のツバキミチオのオリジナル。業績向上に躍起となっているメガバンクの一支店。エリート行員が不正融資に手を染め、その隠蔽(いんぺい)のために銀行の金100万円を横領する。現金欠損の犯人と疑われた行員田端(玉森裕太)、北川(上戸彩)とその上司西木(阿部サダヲ)は、真犯人捜しに乗り出した。

銀行業務の裏側と不正融資の経緯をテンポよく分かりやすく、しかも説明臭く感じさせずに見せる導入が鮮やか。西木らの独自の調査が進むにつれて、不正融資がさらに大きな腐敗と結びついていく展開も飽きさせず、前半は快調に飛ばす。

ただ次第に、次々と証拠を見つけ巨悪に近づく西木のスーパー行員ぶりが突出し、頼まれもしないのになぜ探偵役に没頭するのか不審に思えてくる。〝悪代官と越後屋〟的な構図にも既視感を覚え、だんだん失速。それでも最後まで見せる勢いは保ち、楽しめる作りではある。本木克英監督。2時間2分。東京・丸の内ピカデリー、大阪ステーションシティシネマほか。(勝)

異論あり

社会派というわけでもなく、コメディーというほどでも、人の弱みにつけ込むというほどエグい展開でもなく、人を欺くコンゲームというほど振り切っているわけでもない。が、芸達者がそろい、ほどよくミックスして楽しませる。話が広がりすぎてやや薄味になったのが惜しい。(鈴)