「トークサバイバー! ~トークが面白いと生き残れるドラマ~」

「トークサバイバー! ~トークが面白いと生き残れるドラマ~」

2023.1.02

ドラマ要素が強いトークバラエティーや、青春音楽映画など、年始の一気見にオススメな4作品!:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、村山章、大野友嘉子、梅山富美子の4人です。

ひとしねま

須永貴子

新年1発目の「オンラインの森」は、2022年に配信されたが、タイミングが合わず取り上げきれなかったおすすめ作品をまとめて紹介。年始やその後の3連休で一気見はいかが?
 

間宮祥太朗らが出演するドラマ×芸人らによる即興トークのハイブリッド「トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~」

Netflixコメディシリーズ「トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜」は、間宮祥太朗、高橋ひかる、東出昌大ら俳優たちが演じるドラマの中で、芸人たちがお題にのっとったエピソードトークを即興で披露し、面白くないと判断された者が1人ずつ退場していくというトークサバイバル番組だ。
 
劇団ひとりや千鳥・大悟らプレヤーによるエピソードトークはもちろん、モニタールームで鑑賞している千鳥・ノブの新鮮で的を射たリアクションが秀逸。ドラマパートの予想外の展開に対する解像度を高める役割を果たしている。
 
監督はNetflix全裸監督(2019年)や映画総理の夫(21年)などの河合勇人、脚本は本作の企画・プロデューサーの佐久間宣行と「ウレロ☆未体験少女」(14年)シリーズを作ってきた土屋亮一。普通のドラマやトーク番組にはないハラハラが味わえる。好評のため、23年にシーズン2の製作が発表されている。
 
「トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~」はNetflixにて配信中
 


Scott Patrick Green/Netflix (C) 2022

「スクール・オブ・ロック」好きにオススメな青春音楽映画「目指せメタルロード」

Netflixオリジナル映画「目指せメタルロード」は、98分でポジティブな気分になれる青春音楽映画。冴(さ)えない高校生のケビン(「ITイット “それ”が見えたら、終わり。」のジェイデン・マーテル)は、メタル一筋の親友ハンターに誘われて、ドラマーとしてバンドコンテストを目指すことになる。
 
ティーンの友情と恋に音楽のコンテストを絡め、音楽シーンでクライマックスを迎える作品は珍しくないが、本作はハンターのキャラクター猫写に目をみはるものがある。親が金持ちという設定なので、金の力に物を言わせたメタル関連のコレクションが埋め尽くす彼の部屋は神殿だ。彼が書く文字のメタル風の書体に、美は細部に宿るというフレーズを思い出す。
 
そんなハンターからケビンに行うメタル教育のおかげで、メタルに明るくない人もノーストレスで視聴できる。「スクール・オブ・ロック」や「ピッチ・パーフェクト」、「シング・ストリート 未来へのうた」などが好きな人におすすめしたい。
 
「目指せメタルロード」はNetflixで配信中
 


AARON EPSTEIN/NETFLIX

NYの上流階級を手玉に取った詐欺師を描くクライム・ストーリー「令嬢アンナの真実」

全9話からなるNetflixオリジナルドラマ「令嬢アンナの真実」に、仕事始めの前日に着手するのはおすすめしない。なぜなら見始めたら止められず、寝不足になる危険性が高いから。このドラマは、2017年に逮捕された当時26歳の詐欺師アンナ・デルイことアンナ・ソローキンが、いかにニューヨークの社交界や美術界、企業を手玉に取ったのかを、ニューヨーク・マガジンの記者ビビアンの視点から描く実話をもとにしたクライム・ストーリー。
 
ビビアンが調査を進めるにつれて輪郭がクリアになるアンナの人物像、裁判が近づくにつれて変化するビビアンとアンナの関係性、ビビアンをサポートする職場の“エクスペンダブルズ”たちの活躍など、本作の魅力をげたらきりがない。中でも強い印象を残すのが、ニューヨークの上流階級の異常ともいえる閉鎖性と強い恥の意識だ。
 
そこをこじあけていくアンナの聡明(そうめい)さと大胆さがこのドラマでは存分に描かれていて、痛快ですらある。こんなにも賢いのならそもそも犯罪というリスクをとらなくても成功できたのでは? 彼女が求めたものはお金だけではなかったのか?といった疑問や興味が湧いてしまったあたり、筆者もアンナに魅了されているのかもしれない。
 
「令嬢アンナの真実」はNetflixで配信中
 


他者との関わりを持たない女性の心の軌跡を描く「おひとりさま族」

 JAIHOで12月30日から60日間限定で配信中の「おひとりさま族」は、第17回大阪アジアン映画祭最優秀作品賞受賞作。職場でもプライベートでも他者との関わりを一切持たない独身女性、ユ・ジナが主人公の韓国映画だ。
 
映画祭の公式サイトには、「一人で外食しているだけで周囲に不審の目を向けられるほど、孤独を許容しない韓国社会」とある。そんな社会で孤独を貫くジナの生き方は、お一人様先進国の日本で、プロのお一人様を自認する筆者から見てもかなりハードボイルドだ。
 
職場と家を往復するだけ。趣味はない。常にスマホやテレビをつけっぱなしで「何かをしている人」の状態に自分を置いている。昼食は韓国では貴重な一人飯スポットの「米粉堂」で、夕食はテイクアウトしたお弁当をレンチンしてベッドの上で摂取する。そんなジナが外的要因により、自分の感情を麻痺(まひ)させていたことに気付く数日間が描かれるこの作品は、お一人様を推奨するわけでもなければ否定もしない。
 
伝わるのは、つらいときは近くにいる人に弱音を吐いていいし、つらそうな隣人がいたら手を差し伸べようよ、というシンプルなメッセージだ。
 
「おひとりさま族」は12月30日(金)より映画配信サービスJAIHOにて配信開始

ライター
ひとしねま

須永貴子

すなが・たかこ ライター。映画やドラマ、TVバラエティーをメインの領域に、インタビューや作品レビューを執筆。仕事以外で好きなものは、食、酒、旅、犬。