「椿の花咲く頃」より

「椿の花咲く頃」より

2024.4.27

ゴールデンウイークの一気見にオススメな韓国ドラマ3作品をご紹介!

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

梅山富美子

梅山富美子

ゴールデンウイークにぴったりな、どっぷりとハマって抜け出せない韓国ドラマ3作品を紹介する。
 

「太陽を抱く月」より ©MBC,iMBC All Rights Reserved.

オススメ作①「太陽を抱く月」 U-NEXT配信中

最高視聴率46.1%という脅威の数字をたたき出し、一度見始めたら最後まで一気に見てしまう中毒性のあるロマンス時代劇「太陽を抱く月」(全20話)。Netflixで配信されている話題のドラマ「涙の女王」で、主演を務めるキム・スヒョンを一躍トップスターへと押し上げた作品だ。
 
韓国のベストセラー小説を2012年にドラマ化した本作は、朝鮮王朝の架空の時代を舞台に、初恋同士の少女ヨヌと王子フォンの波瀾(はらん)万丈な運命を描く。熾烈(しれつ)な権力闘争によりさまざまな人々の思惑が交差する王朝で、ヨヌは陰謀により命を落としてしまう。ヨヌのことを引きずったまま王になったフォンの前に、彼女と瓜(うり)二つな巫女(みこ)ウォルが現れる。その正体は記憶を失ったヨヌだった……。
 
ヨヌとフォンのすれ違う切ない恋を軸に、権力を巡る陰謀、裏切り、記憶喪失、恋敵の切ない片思い、どんでん返しと息もつかせぬ展開が続く。2人が幸せを求めようとするたびに大きな壁が立ちはだかり、回を増すごとにこれでもかと感情がジェットコースターのように揺さぶられる。
 
ヨヌにいちずすぎる孤独な若き王フォンを演じたのが、キム・スヒョン。感情を抑えることなく号泣する演技は圧巻で、胸が張り裂けるような気持ちになり、もらい泣きで涙が枯れてしまうほど。冷徹だがウォル(ヨヌ)だけには心を開いていくというギャップもたまらない。キム・スヒョンの涙と、ヨヌ役のハン・ガインのひたむきで清らかさがにじみ出る演技が視聴率をけん引したことは間違いないだろう。
 
ちなみに、物語の重要な鍵を握る子ども時代を演じたのは、ヨ・ジング(「怪物」「王になった男」)、キム・ユジョン(「雲が描いた月明り」「マイ・デーモン」)、イム・シワン(「ミセン -未生-」「それでも僕らは走り続ける」)、キム・ソヒョン(「ノクドゥ伝~花に降る月明り~」)と韓国のエンタメ界をけん引するスターたち。12年前の若き日の彼らのあどけない姿を見ることができる。
 

「私の解放日誌」より

オススメ作②「私の解放日誌」Netflixで配信中

「私の解放日誌」(全16話)は、キム・スヒョンとともに「涙の女王」で主演を務めているキム・ジウォンが出演した、心に響くヒューマンドラマ。22年に韓国で放送され、Netflixで配信されている。
 
田舎町で暮らしながらソウルまで往復3時間かけて通勤するヨム3きょうだい(イ・ミンギ、キム・ジウォン、イエル)が、代わり映えしない日常から抜け出そうとする物語。なにもかもがつらく満たされない次女のミジョン(キム・ジウォン)は、元恋人の借金を肩代わりしていることを家族に隠すため、父親の仕事を手伝うク氏(ソン・ソック)と関わるようになり、ある提案をする。
 
韓国ドラマといえば、ドラマチックなストーリーと感情豊かな登場人物たちを想像する人も多いだろう。しかし、本作の見どころは、3きょうだいそれぞれが抱える問題や感情がリアルに描写されているところ。それぞれがしあわせに向かおうとするも、うまくいかずあがく。
 
苦労が多い日々をどう生きていくべきか、自分をどう大切にしていくのか、人との関係を構築することの難しさ、切っても切れないお金と人との縁、満たされない感情からどのように解放されるのかということが、急激にではなくじっくりと真摯(しんし)に描かれる。だからこそ、3きょうだいがたどり着く結末、ミジョンとク氏の関係がどうなっていくのか読めず、気づくと彼らの人生の物語にのめり込んでいく。
 
3きょうだいの演技がハマっており、特にミジョンを演じたキム・ジウォンの表情に注目。第1話の閉塞(へいそく)感に満ちた不幸っぷりから、徐々に変化していき最終回では別人のような表情を見せており、俳優のすごさを感じることができる。また、謎多きク氏を演じたソン・ソックは危うい大人の色気があふれ、底なしの魅力が。
 
脚本を担当したパク・へヨン氏は、近年の韓国ドラマを代表する人間ドラマ「マイ・ディアミスター ~私のおじさん〜」(18年)などで知られ、「私の解放日誌」でも芯を突くセリフが胸をつく。見落としがちな日常のしあわせを、こぼれ落とさないようにしたくなるドラマだ。
 

「椿の花咲く頃」より

オススメ作③「椿の花咲く頃」 Netflixで配信中

「椿の花咲く頃」(全20話)は、19年に韓国で放送され、その年のドラマ最高視聴率を獲得した名作。一人で息子を育てながらスナックを営むドンベクと、年下の警官ヨンシクの心温まるラブストーリーと、小さな町で起こる恐ろしい事件が交差していく。
 
幼い息子を連れて田舎町オンサンでスナックを始めたドンベクは、町で冷たい目で見られ心ない言葉を投げかけられることもあるが、懸命に日々を生きていた。そんなある日、真面目でまっすぐなオンサン出身の警察官のヨンシクに一目ぼれされ、猛アプローチを受けることになる。一方で、平和なオンサンで殺人事件が起こり、ドンベクの身に危険が迫る。
 
ドンベクとヨンシクのほか、ドンベクの息子ピルグ、ピルグの父親、町の人々を描く群像劇となっており、恋愛、親子愛、サスペンス、人間ドラマと全てのジャンルが詰め込まれていると言っても過言ではない本作は、「人は誰かの奇跡になり得るだろうか」という一貫したテーマで物語が紡がれる。人は完全ではないからこそ支え合い、助け合って生きている、そして「善人でいよう」と思わせる最終回の脚本は見事としか言いようがない。
 
ドンベクを演じたのは、「最高の愛〜恋はドゥグンドゥグン〜」「大丈夫、愛だ」などで、ラブコメの女王として親しまれているコン・ヒョジン。人に頼ることが苦手で一見物静かに見えるが、芯があるドンベクを好演。ヨンシクに愛されただ守ってもらうだけではなく、自身で立ち向かう強さがある魅力的なキャラクターに仕上げた。
 
いちずすぎる熱血漢なヨンシクが当たり役だったカン・ハヌルは、本作で第56回百想芸術大賞のテレビ部門男性最優秀演技賞を受賞。なお、この年にノミネートされていたのは、チュ・ジフン(「ハイエナ」)、ナムグン・ミン(「ストーブリーグ」)、パク・ソジュン(「梨泰院クラス」)、ヒョンビン(「愛の不時着」)と強者ぞろいだった。
 
さらに、オ・ジョンセ(「サイコだけど大丈夫」「悪鬼」)、ヨム・ヘラン(「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」「マスクガール」)、キム・ジソク(「恋するイエカツ」)、イ・ジョンウン(「パラサイト 半地下の家族」)、キム・ソニョン(「愛の不時着」)、イ・サンイ(「海街チャチャチャ」「ブラッドハウンド」)、チョン・ペス(「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」「涙の女王」)と韓国ドラマでよく見かける俳優陣がずらり。彼らの演技によって、より物語に深みが増した。

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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