「太陽は動かない」

「太陽は動かない」©吉田修一/幻冬舎©2020 映画「太陽は動かない」製作委員会

2021.3.04

「太陽は動かない」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

秘密組織「AN通信」のエージェント、鷹野一彦(藤原竜也)と後輩の田岡亮一(竹内涼真)。彼らは24時間ごとに組織へ連絡しなければ裏切り者と見なされ、心臓に埋め込まれたチップが爆発する。エネルギー開発を巡る極秘情報の入手を命じられた2人は、各国のスパイを相手に命がけの戦いを繰り広げる。

見どころは次々と登場する派手なアクションシーン。ブルガリアで約1カ月かけて撮影された市街地でのカーチェイスや爆破、走行中の列車を使った格闘など、迫力満点の場面は見ているだけでワクワクする。冷静沈着な鷹野、心の弱さと勇敢さを併せ持つ田岡のバディーものとしても楽しめる。物語は過去と現在が交錯しながら展開。鷹野の過酷な子供時代を知った時、彼がなぜ組織に忠誠を誓っているかという謎も氷解する。

原作は吉田修一のサスペンス小説「AN通信エージェント・鷹野一彦」シリーズ。羽住英一郎監督がスケールの大きな映像に仕上げた。1時間50分。東京・TOHOシネマズ日本橋、大阪ステーションシティシネマほか。(倉)

異論あり

冒頭から怒濤(どとう)の修羅場の連続で、藤原と竹内の演技も感情とアクションの両面共にハイテンション。その半面、世界各地を飛び回る場面転換がめまぐるしく、時間軸まで入り組んで支離滅裂すれすれ。これ1本で完結感が乏しいのは「WOWOWのドラマ版も見よ」ということか。(諭)

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