サンドラの小さな家  ©Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020

サンドラの小さな家 ©Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020

2021.4.01

サンドラの小さな家

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

2人の幼い娘を育てるサンドラ(クレア・ダン)は元夫の暴力から逃れ、仕事を掛け持ちしながらホテルで仮住まいをしていた。不自由な暮らしの中、清掃作業員として働く家の雇い主、ペギー(ハリエット・ウォルター)が土地と費用の貸し出しを提案。ホームセンターで出会った土木建築業者や彼のダウン症の息子、建物を不法占拠して暮らす友人らそれぞれに事情を持つ仲間とともに、サンドラの小さな家づくりが始まる。

アイルランドの女優、クレア・ダンが企画、共同脚本、主演を務めたヒューマンドラマ。家を失った親友の悲痛な声をきっかけに脚本を執筆し、暴力と貧困に苦しむ弱者に寄り添った視点が貫かれている。執拗(しつよう)な元夫からの束縛やシングルマザーが立ち向かう法律の壁も描かれるが、家づくりとサンドラの再生を重ねた物語にはかすかな希望も。手を携えることの大切さと女性の自立への願いが一筋の光と共に伝わってくる。フィリダ・ロイド監督。1時間37分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪ステーションシティシネマほか。(細)

ここに注目

 根底に流れているのはアイルランド語で助け合う仲間を意味する「メハル」の精神だ。土地を提供する女性、建築業者、娘の友達の母などが無償で協力する姿には、お金ではない何かを得て変わっていく人たちとケルトの思想が息づく。コロナの時代にふさわしい作品にもなった。(鈴)

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