「THE PENGUINーザ・ペンギンー」より

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2024.9.20

<ネタバレあり>バットマンの名物キャラ あの宿敵の覚醒描くドラマ「THE PENGUIN」

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SYO

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世界に衝撃を与えた映画「ジョーカー」の続編「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」の劇場公開が10月11日に控えており、テレビアニメ「異世界スーサイド・スクワッド」も放送されるなどますます多様な広がりを見せる「バットマン」シリーズ。9月20日からは、クリストファー・ノーランやポン・ジュノほか名だたる監督作への出演が続くロバート・パティンソンが主演した「THE BATMAN ザ・バットマン」(2022年)のスピンオフドラマ「THE PENGUINーザ・ペンギンー」 がU-NEXTにて配信開始(全8話。毎週1話ずつ配信)。

この「THE PENGUIN」は映画版の直後を舞台に、コリン・ファレル演じる〝ペンギン〟こと裏社会の男コブに焦点を当てた物語が展開。このペンギンだが、ジョーカーやリドラーと同じく「バットマン」シリーズの名物キャラクター。ティム・バートン監督による「バットマン リターンズ」でダニー・デビートが演じた悲劇の人物像が記憶に残っている方も多いだろう。「THE BATMAN」での彼は、バットマンがまだ新米なのと同様にビラン(敵)になる前の状態。となると、「THE PENGUIN」ではコブが〝覚醒〟する状態が描かれるのか?と期待が膨らむ。


ゴッサム・シティの深まる闇

ではここからは、その第1話を<ネタバレあり>で紹介しよう。リドラーが起こした事件(詳しくは「THE BATMAN」を鑑賞いただきたい)によって貧富の格差がさらに拡大し、略奪や暴動が激化した犯罪都市ゴッサム・シティ。そんななか、街を牛耳っていたマフィアのボス、ファルコーネ(ジョン・タトゥーロ)が死亡し、息子のアルベルト(マイケル・ゼゲン)が2代目を襲名することに。部下として新たなボスのご機嫌取りを行っていたコブだったが、アルベルトの見下した態度に堪忍袋の緒が切れ、衝動的に殺害してしまう……。混沌(こんとん)に次ぐ混沌と、何とも衝撃的な幕開けを迎える「THE PENGUIN」第1話。

その後コブは、車を盗もうとしていた少年ビクター(レンジー・フェリズ)を脅して子分にして死体遺棄を手伝わせる。が、一件落着とはいかず、ファルコーネの娘ソフィア(クリスティン・ミリオティ)にアルベルト失踪への関与を疑われてしまう。身の危険を感じたコブはビクターを伴い、母フランシス(ディードル・オコンネル)のもとへ。彼女を連れて逃亡しようとするが、「お前は衝動でなく本能で撃ったの」「もう少しで望むものが手に入る。逃げ隠れするなんて絶対にダメ。この街はお前のものになる」と諭され、下克上への決意を固める。だが、その直後にソフィアに捕まり拷問され……。

絶体絶命のピンチに陥ったコブだったが、そのとき屋敷内に車が侵入。そのトランクには、小指を切り取られたアルベルトの死体と「PAYBACK(報復)」の文字が刻まれていた。コブはひそかにビクターに命令を与え、ライバル組織のしわざに見せかけたのだ。邪魔な組織同士の抗争をあおり、「この街を牛耳る」とビクターに宣言するコブ。「THE PENGUIN」第1話は約1時間をたっぷりと使い、使われる側だった彼が野望を開花させ、スーパービランとしての一歩を踏み出すさまを描いてみせた。劇中、コブは生い立ちが近いビクターに「世界は俺たちに厳しい。だから望むものはつかみ取る。闘って奪い取るしかない」と語りかけるが、本作はノワール感漂う「THE BATMAN」の世界観を踏襲しつつも、裏社会で成り上がっていくマフィアものとして新たな顔を見せている。


コリン・ファレルの鬼気迫る熱演

しかし、かといって飛躍しておらず、リドラーという悪の出現によってマフィアのボスが殺害され、街が混乱に陥り均衡が崩れた先に起こる物語としてシームレスにつながっており、「THE BATMAN」に魅せられた観客においてはごく自然に受け入れられるのではないか。元来、「バットマン」シリーズはゴッサム・シティという犯罪都市――つまり〝街〟が登場人物のひとりとして機能していたが、暗部も含めた街の隅々まで知る敵側の視点で描くことでその特色がより強調されており、第2話以降のエピソード、さらには「THE BATMAN」続編への期待も高まる。

製作総指揮にも名を連ねるコリン・ファレルの熱演もすさまじく、未熟で揺らぎのある人物がヒーロー/ビランとして意志を固めていく点で「THE BATMAN」と鏡映しになっているのもうまい。この先、コブが「ペンギン」となる日は来るのか――そこに至るまでの物語に思いをはせながら、見届けてゆきたい。

ライター
SYO

SYO

1987年福井県生まれ。東京学芸大学にて映像・演劇表現を学んだのち、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て2020年に独立。 映画・アニメ、ドラマを中心に、小説や漫画、音楽などエンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。トークイベント、映画情報番組への出演も行う。

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