ひとしねま

2022.4.01

チャートの裏側:成長見守る応援が結実

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

「映画 おそ松さん」が興味深い大ヒットだ。スタート3日間で興行収入が6億4000万円。これは、今年公開された邦画では最高の成績である。興味深いのは各日の興行収入で、初日の金曜日が、土曜日、日曜日を上回ったことだ。通常であれば、このようなことはありえない。

本作はテレビアニメ「おそ松さん」を実写映画化した。赤塚不二夫さん原作の「おそ松くん」を基に、成長した六つ子たちの姿を描く。六つ子を人気アイドルグループのSnowManが演じる。金曜日の興行が膨らんだ理由が、彼らの出演だった。ファンが興行を支えたと見える。

とはいえ、簡単に支えられるような数字ではない。これには、アイドル推しの今の熱烈なファン気質が影響していると聞いた。SnowManは、結成から約10年がたつ。ファンは彼らの成長の過程を見守りつつ、さまざまな形で応援を続けている。今回は、それが映画に結実した。

彼ら全員のビジュアルが入ったステッカーの入場者プレゼントの効果も大きい。特に金曜日が上がったのは、なくならないうちに、手元に欲しいという心理による。ただ、テレビアニメのファンの集客は少ない。アニメと実写作品は、支持層が分かれたようだ。映画はキテレツ、ハチャメチャだが、このテイストは赤塚さん好みではないか。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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