ひとしねま

2022.4.15

チャートの裏側:魔法が映す時代の深部

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

「ファンタスティック・ビースト」の新作が、最初の3日間で興行収入10億6000万円を記録した。大ヒットにして重要な点がある。新型コロナウイルス禍以降の洋画のスタートでは、2番目に数字が高かったことだ。洋画興行に少しずつ光が差してきた。意味ある作品である。

本作はハリポタシリーズの前日譚(たん)という話の展開をもつ。「ファンタビ」連作の3作目にあたる。今回、客層が興味深い。メインは20代から40代の男女だが、ファミリー層が減り、年配者が比較的増えた。これは中身が関係していると感じた。今後の興行にも影響してこよう。

主人公の魔法動物学者らの前に、人間界を破滅させようとする魔法界の実力者が現れる。この話の展開が、どうしても大人向きになる。年配者が増えたのは、今では懐かしささえ漂うハリポタテイストが、随所にあるからだろう。この両面が客層の微妙な変化を生んだとみる。

ところで、さきの実力者は、ある悪辣(あくらつ)な手立てを使って権力の座を得ようとする。魔法界の一人が言う。人間界、魔法界の対決となれば、ともに「滅びる」。この言葉に、身の毛がよだつ思いがした。ウクライナで起こっていることが頭をよぎったからだ。映画は時代を映す鏡とよく言われる。この意味の深さは、全く計り知れないと思う。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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