「フタリノセカイ」

「フタリノセカイ」

2022.7.08

偏見に向き合う愛の物語「フタリノセカイ」 洪相鉉

2022年もはや7月。上半期の映画界では、新作に加えてコロナ禍で延期されていた作品がようやく公開され、ヒットも続発。映画館のにぎわいも戻ってきた。ひとシネマ執筆陣が5本を選び、上半期を振り返ります。

洪相鉉

洪相鉉

①    「フタリノセカイ」(飯塚花笑監督)
②    「鈴木さん」(佐々木想監督)
③    「リング・ワンダリング」(金子雅和監督)
④    「流浪の月」(李相日監督)
⑤    「ハケンアニメ!」(吉野耕平監督)

自由精神きらびやかに開花

生活の制限が想像力まで脅かすコロナ禍に抵抗しているのか。映画界では社会の古い慣習に立ち向かうクリエーターの自由精神がきらびやかに開花した。彼自身LGBTQの飯塚花笑は制度の限界や世間の偏見に向き合う愛の物語「フタリノセカイ」で2022年の門を開き、かねがねカンヌで腕を認められていた佐々木想が「鈴木さん」で思考しない大衆に警鐘を鳴らしながら後に続いた。自然と人間の関係性に注目してきた金子雅和は時空を越えるストーリーテリング「リングㆍワンダリング」で今日を洞察した。
 
6年の沈黙を破り、ゴッホを連想させる強烈で美しい作風で帰ってきた李相日の「流浪の月」もうれしい。そして上半期を締めるのは、アニメと実写を行き来しながら世界の人々を感嘆させた「ハケンアニメ!」の吉野耕平。超短編を作るシネマキッドだった彼の自己反映的な作品は、夢見る全ての人々に訴える。「あきらめるな。フレームの外にいる我々こそが主人公なのだ」

ライター
洪相鉉

洪相鉉

ほん・さんひょん 韓国映画専門ウェブメディア「CoAR」運営委員。全州国際映画祭ㆍ富川国際ファンタスティック映画祭アドバイザー、高崎映画祭シニアプロデューサー。TBS主催DigCon6 Asia審査員。政治学と映像芸術学の修士学位を持ち、東京大留学。パリ経済学校と共同プロジェクトを行った清水研究室所属。「CoAR」で連載中の日本映画人インタビューは韓国トップクラスの人気を誇る。

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