「損するのは嫌だから」より

「損するのは嫌だから」より提供 Prime Video

2024.10.08

偽装結婚から始まる2人の関係は⁉ シン・ミナ&キム・ヨンデ主演のロマコメ 「損するのは嫌だから」

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

梅山富美子

梅山富美子

とにかく損をしたくない主人公が、年下のコンビニ店員に偽装結婚を持ちかける韓国ドラマ「損するのは嫌だから」( Amazon Prime Video で配信中、全12話)は、ラブコメディーに定評がある「海街チャチャチャ」のシン・ミナと、近年勢いに乗る「流れ星」のキム・ヨンデが共演のロマコメ。損得で結婚するなんて……そんな2人の行く末とは。
 


独身女性の出世が難しい現実に偽装結婚を思いつくヒロイン

ソン・ヘヨン(シン・ミナ)は、同僚で元カレのアン・ウジェ(コ・ウク)の結婚式に仕方なく出席し、二股されていた事実を知ってしまう。さらに、彼女が働く会社では既婚者の福利厚生が充実しているうえに、独身の女性では出世も難しいという現実を突きつけられる。損ばかりだと怒り心頭のヘヨンは、偽装結婚を計画し、これまでに支払ってきたご祝儀代を回収するためにも、結婚式を挙げようとする。
 
ヘヨンが偽の夫になってほしいと話を持ちかけたのは、よく行くコンビニの夜間バイト、キム・ジウク(キム・ヨンデ)。若干面倒な客であるヘヨンが酔っ払いながらした提案に、ジウクは当然のように断るが、この契約の提案をきっかけに2人は距離を縮めることに。
 
結局、猫を1週間保護することを条件に契約を結んだ2人は、結婚式用のプロポーズも済ませ、結婚式を挙げる。ここで契約終了、終わりかと思いきや、ジウクがヘヨンの勤める会社に入社し、上司と部下の関係に。偽装結婚を続けなければならない状況が続き、ついには同じ屋根の下での生活……とお互いを知れば知るほど相手の魅力に気づいていく。
 
豪快なヘヨンとおとなしく冷静なジウクのバランスが絶妙で、かみ合わない2人が恋に落ち、すれ違う様子に何度もじらされる。また、ラブコメだからこそできる誇張した演出がよく利いていて、いたるところにちりばめられた笑いに思わず噴き出す。
 

キム・ヨンデのキラキラした美男子ぶりも楽しめる

第1話では、ヘヨンが元カレの結婚式で妄想を繰り広げるシーンが印象的。突然テーブルクロス引きをして、その布で花嫁風衣装になり、記念写真に割り込むなどやりたい放題。普段は前髪で顔が見えづらくメガネ姿のジウクが、結婚式の試着で見せたあまりの美男子ぶりを、キラキラとした演出がさらに引き立てた。
 
その美貌に驚くヘヨンたちの反応も、キム・ヨンデの魅力を最大限に生かしたシーンとなった。ほかにも、飲みすぎた翌日のホテルでの騒動、ヘヨンの気を引こうとするジウクのけなげな行動など、笑えるシーンは挙げるとキリがない。
 
その一方で、社会貢献に熱心な母親が里子にばかりを気にかけていたことで、十分な愛情を受けられなかったと感じるヘヨン、ヘヨンの過去を知るジウク、里子だったチャ・ヒソン(チュ・ミンギョン)の恋人との関係、同じく里子だったナム・ジャヨン(ハン・ジヒョン)の恋と家族の物語など、コメディーのなかにシリアスな話も挟み込まれる。
 

登場人物たちの成長物語でもある

本作の登場人物たちは、誰も清廉潔白ではない。良かれと思って行動したことや、考えなしに発言したことが相手を傷つけたりする。それでも彼らなりに前に進もうともがく成長物語でもあった。家族だから、ヒロインだから、財閥だからというセオリーや枠組みにとらわれないところもよかった。
 
また、ヘヨンが勤める会社の社長ポク・キュヒョン(イ・サンイ)と、人気ウェブ小説家のジャヨンの関係には、メインのカップルに負けず劣らずやきもきさせられた。アンチコメントで訴えた人と訴えられた人という、これ以上ない最悪な出会い方をした2人。最後までどうなるのか読めず。わがまま社長だが、すれたところがなくまっすぐなキュヒョンに、ジャヨンの気持ちが傾くのもうなずける。
 
2人のファンに朗報で、本作のスピンオフ「社長のお品書き」が10月3日から配信されている。目が覚めたジャヨンが気づくと自身の執筆した小説の主人公になってしまう、という内容で、社長(イ・サンイ)も登場する。
 
ちなみに、シン・ミナとイ・サンイは「海街チャチャチャ」(2021年)で先輩と後輩という役柄、キム・ヨンデとハン・ジヒョンは「ペントハウス」シリーズ(20〜21年)で、双子の兄妹を演じていた。俳優同士の再共演はめずらしいことではないけれど、俳優たちのまた違った顔を見ることができるのが魅力。異なる役でも化学反応の良さを見せてくれると、また再び共演しないかと期待したくなる。
 
「損するのは嫌だから」はPrime Videoにて独占配信中

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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