「あしたの少女」 ©2023 TWINPLUS PARTNERS INC. & CRANKUP FILM ALL RIGHTS RESERVED.

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2023.8.25

特選掘り出し!:「あしたの少女」 理不尽な悲劇繰り返すな

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

主人公である少女が、映画の途中で非業の死を遂げてしまう。そんな異例の展開を見せる本作は、2017年に韓国の全州市で起こった実話の映画化だ。担任教師からの紹介でコールセンター運営会社の実習生として働き始めた女子高校生が、その約3カ月後に自ら命を絶つ。いったい彼女の身に何があったのか。

前半はダンス好きで明るい性格のソヒ(キム・シウン)が、顧客からの苦情に対応するコールセンターの業務に疲弊していく様を描出。見ているこちらまでつらくなる場面の連続だが、従業員同士の競争をあおり、契約書に記された成果給を支払わない会社側の労働搾取は、実際の事件を忠実に再現したという。

「私の少女」以来の新作となるチョン・ジュリ監督は、後半にもう一人の主人公を登場させた。地元の刑事ユジン(ペ・ドゥナ)が捜査に乗り出し、ソヒが自死に追いやられた事件の真相に迫るこのパートは、チョン監督の創作。鋭い迫真性に貫かれた一連の描写には、こんな理不尽な悲劇は絶対に繰り返されてはならないという作り手の願いがひしひしと感じられる。視点の異なる二つのパート、2人の主人公が時空を超えて結びつくような、映画ならではの映像表現にも胸を打たれた。2時間18分。東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋ほか。(諭)

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