「BAD LANDS バッド・ランズ」 ©2023「BAD LANDS」製作委員会

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2023.9.29

「BAD LANDS バッド・ランズ」 充実の骨太娯楽作

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

大阪で特殊詐欺グループの一員として、高城(生瀬勝久)の下で働くネリ(安藤サクラ)と弟のジョー(山田涼介)。互いを頼りに生きる2人だが、ある時ジョーが暴走し、取り返しのつかない事態を引き起こす。2人は大金を手にしたものの命を狙われ、逃走を図る。黒川博行の小説「勁草(けいそう)」を、原田眞人監督が映画化した。

アウトロー姉弟のバディーものにして悪党同士がせめぎ合うピカレスク。原田監督らしいスピード感あふれる語り口でグイグイと見せる。特殊詐欺の鮮やかな連係プレーと警察捜査班の駆け引きから一気に引き込み、多くの登場人物が出入りしながら次々と展開する物語に要所でアクションを挟んでよどみがない。捜査班、金を取り戻そうとするヤクザ、ネリに執着する元愛人ら手ごわい追っ手たちも魅力的。俳優陣も適材適所、特に2人を助ける壊れかけの元ヤクザを演じた宇崎竜童がいい味だ。特殊詐欺の手口や社会格差を利用した組織の構造など、現代社会のひずみにも目配りし、ベテラン監督の充実ぶりがうかがえる骨太の娯楽作。2時間23分。東京・丸の内TOEI、大阪・T・ジョイ梅田ほか。(勝)

異論あり

早口の大阪弁、細かいカット割りも相まって出だしはムード先行。安藤、山田、生瀬らの丁々発止のセリフに役者の魅力は感じられたが、雰囲気ばかりが前面に出る展開と演出にだれるばかり。警察、詐欺の仕掛け人、裏組織の面々など登場人物は博覧会的に多彩だが、どれも上っ面で深みに欠けた。(鈴)

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